“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
日本とイングランド、その差って何だ。
U-17W杯で見えた世界最先端の育成。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2017/11/01 10:30
優勝したイングランド代表にはプレミア強豪の下部組織所属選手も多い。そんな彼らと日本はどう戦うのか、今後の焦点となる。
2014年に銘打った「イングランドDNA」の成功。
変革のタイミングは2010年南アフリカW杯だった。育成強化の真っ最中だったドイツに飲み込まれる形で、ラウンド16で姿を消した(ドイツ4-1イングランド)。
そこを境にドイツを見習って、イングランドもFAが主導して、育成改革に着手したのだ。
まず乗り出したのは技術面、戦術面の強化。2012年に“エリート・プレーヤー・パフォーマンス・プラン(EPPP)”の導入など育成システムの構築と、育成年代の指導者の改善・育成が図られた。2014年には「イングランドDNA」と銘打つと、さらにポゼッション強化の路線を打ち出した。
その中でGKフレディ・ウッドマン(ニューカッスル)、DFジョンジョー・ケニー(エバートン)、FWドミニク・ソランケ(リバプール)らが育ち、2014年にU-17ヨーロッパ選手権優勝を達成。そして今年5~6月のU-20W杯ではDFフィカヨ・トモリ(ハル)など新たな戦力も台頭して初優勝。ソランケは大会MVPとなった。
それに続いたのがU-17代表だった。ジェイドン・サンチョ(ドルトムント)を筆頭に、MFフィル・フォデン(マンチェスター・シティ)、カラム・ハドソン=オドイ(チェルシー)、アンヘル・ゴメス(マンチェスター・ユナイテッド)、FWリアン・ブリュースター(リバプール)など“期待の世代”の評判通りの結果を残した。
国民性を反映させた上のオリジナルスタイルを。
独自路線で復活を遂げつつあるイングランド。現在AFC U-19選手権予選に挑んでいるU-18日本代表・影山雅永監督と話をした際、興味深い話を聞いた。
「“アスリート化”してきた近代サッカーの中において、イングランドはポゼッションのところで全く危なげがなかった。これはドイツにも言えることですが、自分たちの確固たる強みを昔からずっと持っている。現代サッカーを戦う上で、相手の出方や変化を読み取りながら、簡単にボールを失わないで試合を進めるという部分では、スペインなどと比べても自分達の弱みだと言う自覚を持っていました。
でも、ドイツもイングランドも育成年代の強化を始めるにあたって、自分達の歴史、文化、社会の風土、国民性をしっかりと反映させたオリジナルのものではないといけないと、スタートの段階できちんと把握しているんです。もともとの強みにプラスして、ポゼッションの技術、パスの上手さ、パススピードに加えて、技術と判断、スピードすべてがハイレベルだった。まさに育成改革が驚異的なスピードで実を結んでいる。正直、驚きばかりでした」