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2017年のドラフト会議を完全採点。
清宮の日本ハムは90点。最低は……。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/10/27 12:20
清宮幸太郎は嬉しそうだった。メジャー志向も隠さないだけに、ダルビッシュ、大谷を育てた実績がある日本ハムは相性がいいはずだ。
小林、宇佐見がいるのに捕手を2人も上位指名した巨人。
< ヤクルト 50点 >
チーム成績がBクラスに低迷したヤクルト、巨人も1位で清宮を入札した。下位球団は即戦力投手に向うのが普通なので、これには意表を突かれた。
ヤクルトに関して言えば'16年は打率がリーグ2位、防御率が6位、優勝した'15年は打率が1位、防御率が4位だから「打高投低」が常態化している。さらに10月には主力の小川泰弘と星知弥が故障したヒジを手術し、全治は未定。そんな状況で戦力になるまで時間を要する清宮を指名する余裕があるのか、と思ったのは確か。外れ1位でこれも高校生捕手の村上宗隆(九州学院・捕手)を指名、何かスカウティングのポイントが定まっていないように見えた。
< 巨人 50点 >
巨人は清宮、村上の抽選に敗れ、最速152キロを毎試合のように計測する速球派、鍬原拓也(中央大・投手)に落ち着いた。シンカー、スライダーを前面に押し出した今春のリーグ戦は好投が続いたが、ストレートを押し出した秋は痛打を食らう場面が目立った。似ているのは投球フォームや不安定さも含めて増井浩俊(日本ハム)か。
また2、3位で社会人のジャパン代表クラスの岸田行倫(大阪ガス)、大城卓三(NTT西日本)と続けて捕手を指名したのは理解できない。
チーム内にはWBCの正捕手、小林誠司(来季29歳)がいて成長著しい宇佐見真吾(同25歳)もいる。ここに来季22歳になる岸田と25歳になる大城を入れれば年齢差が狭い中に4人がひしめくことになる。
ドラフト制度導入以前の巨人が王貞治、長嶋茂雄にあえてライバル的な新人をぶつける補強をしたが、今そういうことをすれば他のポジションに好素材の選手が行き渡らなくなる。
現状を見れば投手の層が薄くなる。高校生が8位の湯浅大(健大高崎・遊撃手)1人というのも寒々しい。
< 西武・楽天 50点 >
西武は田嶋を外して齋藤大将(明治大)、楽天は清宮、村上を外して近藤弘樹(岡山商科大)を指名。
斎藤は左腕スリークォーターから緩急を操る技巧的ピッチングに持ち味があり、近藤は長身から投げ込むストレートに威力を秘める本格派。2位以下に注目すると西武は2、6位以外に投手を配し、楽天は2位岩見雅紀(慶応大・外野手)、3位山崎剛(国学院大・二塁手)に即戦力候補の野手を指名し、それぞれ弱点補強に努めた。
点数を低くしたのは1位の齋藤、近藤に打者を圧倒する凄みがまだ備わっていないからだ。
< ソフトバンク 50点 >
ソフトバンクの1位・吉住晴斗(鶴岡東・投手)には驚かされた。2年時の甲子園以来見ていないので現在の充実ぶりがわからないが、それでも1年で1位指名されるまでに変身するのか、こちらの想像力が追いつかなかった。
この吉住をはじめ、3位増田珠(横浜・外野手)、5位田浦文丸(秀岳館・投手)という高校生を指名したのはここ数年のソフトバンクの路線。むしろ大学生の2位高橋礼(専修大)、椎野新(国士舘大・投手)の指名のほうが新鮮だった。
ほかにも私が注目した選手はいる。
ロッテの育成1位・和田康士朗(BCリーグ富山・外野手)は前にも紹介したことがあるが、高校の野球部を経由せず、クラブチーム、独立リーグを経ての18歳での指名である。こういう経歴の選手はこれまでのプロ野球の中でも少ないはずである。
ヤクルト8位の沼田拓巳は和田と同じBCリーグの選手で(石川所属・投手)、150キロを超えるストレートは威力十分で、投手陣の整備が急がれるヤクルトでは起用回数は多いはず。日本ハムの7位・宮台康平は言うまでもなく東京大学所属の選手で、いろいろな可能性をとりあえず捨ててプロに飛び込んでくる。こういう覚悟の定まった選手は私には無視できない。