福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
福西崇史が語る現代サッカーMF像。
日本の“中盤3枚”に欲しい能力って?
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/10/16 11:30
福西氏も「ボランチやアンカーとして期待している」と語る遠藤航。今回の連戦での課題をどう解決していくかは注目ポイントだ。
状況を見てダブルボランチになれるインテリジェンス。
個人としての能力とともに、プレー中の柔軟性も見逃せません。強豪の中盤を見ていると2インサイドハーフ、1アンカーという形にこだわらず、状況に応じてダブルボランチになってスペースを埋めている時間帯もある。他にも左サイドにボールがあるのなら右インサイドハーフが絞ってケアしていたり、その瞬間ごとに必要なポジショニングを自然とやっているんです。
これは日本サッカー全体の話でもあるんですが、彼らを見ていると、攻守両面でスケールの大きな中盤の選手を今後どうやって育てていくかというのも大切になってくる。僕はそう強く感じています。
ただ現時点でのメンバーでも、それぞれの良さを出しつつも状況に応じたプレーができれば、チーム全体にもっといい影響が出るかと思います。もし自然とポジションを変化させることが出来れば香川のように周囲と連動して仕掛けられるタイプ、もしくは小林、柴崎といったパサーがトップ下でプレーできるメリットも生まれますよね。
オーストラリア戦ではインサイドハーフに山口と井手口、アンカーに長谷部という並びでボールを奪うことを優先しました。ただサッカーは相手を見て戦うものだから、その辺りは誰が出てもスムーズな関係性を作っていくことが重要になる。
お互いの関係性という部分では、パウリーニョとカゼミーロを見てもそう。パウリーニョがゴール前に出ていく回数は多いけど、相手がパウリーニョを警戒していると判断したら、カゼミーロが攻撃参加する時だってあるわけです。それぞれがピッチ内で適切なポジショニングと判断を高いレベルで両立させているからこそです。
小林、遠藤は今回味わった悔しさをどう生かすか。
そういった意味で、連戦で明確な結果が出なかったとはいえ、小林と遠藤には期待をしたいところです。
小林はピッチ全体を動き回ってリズムを作ろうとしたし、ニュージーランド戦ではフィニッシュまで絡んでいった。遠藤もアンカーを任されたハイチ戦で3失点してしまったのは事実ですが、局面を見れば予測を利かせて前からつぶしに行こうとする意欲を見せていた。その姿勢があったことは強調しておきたい。そういったものは忘れずに、今後招集されるチャンスがあれば周囲との関係性や柔軟性を所属クラブで磨いていければいいのでは、と。
小林はへーレンフェーンでの定位置争い、遠藤は浦和でボランチではない(センターバックやサイドバック)ポジションでのプレーと、クラブに戻っての難しさもあるでしょうが、MFとして勝負できる総合力をさらに高められるか。悔しさを味わった連戦をどう生かすかは、自分たち次第ですからね。
(構成:茂野聡士)