話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「悪くない」を捨てる勇気が必要だ。
追い詰められた大宮、残留へ希望は?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byN.O.ARDIJA
posted2017/10/08 07:00
試合終了後、肩を落とす渡部大輔ら大宮イレブン。勝利を手にしたい気持ちは、誰もが一緒だ。
悪くないゆえに方針転換を図れないジレンマ。
選手たちは引き分けに終わったこと自体には落胆していた。ただ、試合内容については悲観するよりも、今のサッカーをやり続けて、最後の精度を上げていかないといけないという声が多かった。
過去の残留争いでは“悪くない内容”ゆえに大胆な方針転換を図れなかったり、効果的な補強ができなかったチームがJ2降格の憂き目にあっている。例を挙げるならば2012年のガンバ大阪、'14年のセレッソ大阪、'15年の清水、'16年の名古屋といった辺りだ。
大胆に戦術を切り替えるリスクよりも、上積みを期待する。それはややもすれば、当座の試合で出た課題の解決に繋がらない可能性もある。
もし攻撃の形があっても点が入らなかった場合、最後の精度を欠いた個人の技術に大きな要因はある。ただそれと同時に、相手に対策を練られているという側面も見逃してはならない。
大宮と対戦した清水は、サイドからの攻撃を見切って、ボックスの中を固めて対応していた。大宮は持ち味としているサイド攻撃からなかなかいい形でシュートまでもっていけない一方で、カウンターからの方が決定的なチャンスを作り出せていた。自分たちのやり方へのこだわりが強すぎ、柔軟性を欠いたとも言える。
残留を争う広島と甲府は状態が上向きつつある。
行き詰った状態では選手の配置や起用を含めて大胆に変更し、新しい風を吹かせないと何も変わらない。
例えば、同じ残留争いに身をおきながら、ここにきて勝ち点を伸ばしているサンフレッチェ広島である。ここ近年の代名詞だった3バックから4バックへと大胆な変更を図った。その中で勝利を挙げたことで自信を取り戻しつつある。またヴァンフォーレ甲府もそうだが、夏に獲得した前線の外国人選手が活躍したことにより、チーム状態は上向きつつある。
同じようなケースは2001年にもあった。J2降格の危機に瀕した東京ヴェルディは終盤戦、緊急手段としてエジムンドを獲得した。そのエジムンドは5試合2得点と活躍し、クラブは何とかJ1残留を手にした。