話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「悪くない」を捨てる勇気が必要だ。
追い詰められた大宮、残留へ希望は?
posted2017/10/08 07:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
N.O.ARDIJA
大宮アルディージャがJ2降格の危険水域に入った。
0-0のドローに終わった清水エスパルス戦後、NACK5スタジアムのミックスゾーンには重たい空気が漂っていた。ロッカーから出てくる選手の表情からは、生気が失われているように見えた。勝たないといけない試合だったゆえに、ショックが大きかったのだろう。
「戦い方は悪くはないと思うけど……」
選手は異口同音に話していたが、どれほど多くの選手が現状を冷静に受け止めているか、それが今後を大きく左右するのではないか。
過去の残留争いを見ていく中で、実際に降格したチームをいくつも見てきた。そこに共通したのは「なんとかなる」という漫然とした意識である。言い換えれば、現状打破に向かう一歩が踏み出せていないのだ。
その傾向は、悪くない試合内容であったとすると、さらに難しいものになる。
継続した積み重ねによって好転を目指し、現状維持を選択する。だが、その“いつか”はやってこないまま残り試合が少なくなり、さらなるプレッシャーの中では、今までできていたはずの約束事さえできなくなる。そうなると蟻地獄に落ちたのと同然だ。
「0-0でもダメ。勝ち点3が必要」だったが……。
今の大宮は、どうだろうか。
清水戦を迎えるにあたって、大宮はそこまでの5試合で勝ち星がなかった(2分3敗)。残り7試合ということ、まだ安全圏内ではない清水相手だったことを踏まえれば、J1残留のために勝利はマストだった。だからこそ伊藤彰監督も「0-0でもダメ。勝ち点3が必要」と、この試合の重要性を選手に意識させてきた。
大宮は点を取られて後手を踏むリスクを避けるために、慎重に試合に入った。時間が経つごとに落ち着いて試合を運び出すと、アグレッシブに攻めを繰り出していった。押しこまれる時間もあったがボールを保持して、サイドから崩す、あるいはショートパスをつないで中から崩す攻撃ができていたし、セットプレーのチャンスも数多くあった。
それでも得点は生まれることなく、勝ち点1しか得られなかった。