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村田諒太とミドル級頂点の距離は?
ゴロフキンvs.アルバレスの意味。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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posted2017/09/19 11:40

村田諒太とミドル級頂点の距離は?ゴロフキンvs.アルバレスの意味。<Number Web> photograph by AFLO

ゴロフキン(左)の無敵感もかなり薄れてきた。村田諒太は世界の頂点への距離をどの程度と見積もっているのだろうか。

村田は、この2人の勝者に勝つ必要がある。

 その最も稼ぐボクサー、アルバレスとゴロフキンが拳を交えるのだからファンにとっては垂涎の好カードに違いない。今回の試合は4月にロンドンのウェンブリー・スタジアムに9万人を集めたヘビー級タイトルマッチ、アンソニー・ジョシュア(イギリス)vs.ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)と並ぶ、2017年最大のビッグマッチだったのだ。

 村田の発言の真意はここにある。本当のトップ、本当の王者の称号を得るためには、この2人の勝者に勝たなければならないのだと─―。

 試合は白熱した。好戦的なゴロフキンがKOを狙って圧力をかけ、アルバレスが足を使いながらカウンターを打ち込む。序盤はアルバレスがゴロフキンのパンチをうまく外し、ジャブやコンビネーションを打ち込んで試合を優勢に進めた。

 しかし、中盤以降はゴロフキンのプレッシャーが徐々に効いてくる。アルバレスに疲れが見え、何とかごまかしながら試合を進めているような印象だ。一方のゴロフキンもミスブローが目立ち、結局つかまえられないまま試合終了のゴングを聞いた。

ゴロフキンは35歳、下り坂なのは間違いない。

 採点の結果は三者三様のドローだった。ゴロフキンの勝利を支持する声も多く、特にジャッジの1人、ベテランのアデレード・バード氏が118-110でアルバレスの勝利としたことで大きな議論を巻き起こしたが、採点はともかく、試合そのものは緊張感にあふれた好ファイトだった。

 この日のT-モバイル・アリーナは2万2358人の大観衆で埋め尽くされた。ペイ・パー・ビューの売り上げは明らかになっていないが、興行的には大きな成功を収めたと言えるだろう。その結果がドローなのだから再戦は当然の流れだ。

 試合後の記者会見でアルバレスは「リングに戻ってくるのは来年の5月か9月だ」と発言した。挑戦者ながらポジション上位のアルバレスがこう言うのだから、再戦は早くて5月ということになる。

 次戦でどちらが勝つかはまったくわからないが、ゴロフキンは35歳という年齢が不安材料だ。今年3月の試合で連続KO勝利が23で途絶え、今回キャリアで初めて2試合連続の判定決着となった。下り坂に入っていることは間違いなく、そういう意味ではアルバレスがリマッチを制する可能性は十分にある。

【次ページ】 村田はまず世界王者になり、箔をつける必要がある。

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