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山中慎介と対照を成す人生。天才・岩佐亮佑の“回り道”。~日本人同士の世界戦を制して、ようやく日の目を見た才能~
text by
前田衷Makoto Maeda
photograph byKYODO
posted2017/10/09 11:30
岩佐に敗れて、現役引退を表明した小國以載からは「最後がおまえで良かった」とのメッセージがあったという。
「ここまでくるのが長くて……ホッとしました」
9月13日のIBF世界S・バンタム級タイトル戦で宿敵小國以載(ゆきのり)を6回TKOに破り、新チャンピオンになった岩佐亮佑が試合後に漏らした一言には、実感が籠っていた。
起伏の激しいボクサーの現役生活はしばしば人生に例えられる。時には、ひとつの試合そのものが人生の縮図となることがあるが、この夜の岩佐の試合がまさにそうだった。
1967年の沼田義明―小林弘戦以来35度目となる日本人同士の世界タイトル戦。高校時代に対戦して勝った相手、小國とはプロでもスパーリングを重ねた旧知の仲。しかし世界獲得レースでは小國に先を越され、指名挑戦者として迎えたのがこの一戦だった。