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小國vs.岩佐戦に詰まっていたもの。
ボクシングにおける「紙一重」とは。

posted2017/09/14 11:30

 
小國vs.岩佐戦に詰まっていたもの。ボクシングにおける「紙一重」とは。<Number Web> photograph by Kyodo News

試合後の岩佐(右)と小國のダメージには大きな差があった。しかし「これが逆になっていたかもしれない」と思わせる名試合だった。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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 IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチが13日、大阪市のエディオンアリーナ大阪で行われ、挑戦者で同級3位の岩佐亮佑(セレス)が王者の小國以載(角海老宝石)を6回2分16秒TKOで下し、悲願のタイトル獲得に成功した。互角と見られていた試合は、岩佐が初回に1度、2回に2度のダウンを奪い最後はストップを呼び込む完勝。勝負の分かれ目はどこにあったのだろうか。

 小國と岩佐。ともにスタイリッシュなボクシングが売りではあるが、実に対照的な個性を持つ両雄の対戦は、試合前の予想の段階からワクワクさせるものがあった。

 チャンピオンの小國は、アマチュア時代にタイトル獲得の経験がない。プロでは無敗のまま東洋太平洋王座を獲得したとはいえ、これを同じ13日のリングに登場した和氣慎吾(FLARE山上)に奪われるなど、決して目立つ存在ではなかった。

 そして昨年暮れ、23戦22KO勝ち(1無効試合)のグスマンに対し、ガードを固めてカウンターのボディブローを見舞うという作戦を貫き通して番狂わせの戴冠。試合前はジョークや弱気発言でメディアをけむに巻く、なんともしたたかなボクサーである。

試合前から駆け引きを仕掛けた小國のしたたかさ。

 今回も試合前、高校時代に敗れ、スパーリングで何度も手合わせしている岩佐を「大の苦手」と公言し、苦手な食べ物を克服する小学生のごとく、泣き顔でピーマンを食べるパフォーマンスを披露した。これなどテレビ局の演出というよりは、岩佐がやりづらいムードを作り出そうという、小國ならではの作戦のように思えて仕方がなかった。

 一方の岩佐は高校時代に3冠を獲得。1年生で初めて出場したインターハイの相手が1学年上の小國で、あっさりと勝利したエリートである(この大会は準優勝)。

 ゆえにプロ転向時から注目され、世界王者を嘱望された。しかし、初の日本タイトル挑戦は前WBC世界バンタム級王者の山中慎介(帝拳)に敗れ、世界初挑戦となった'15年のIBF世界バンタム級暫定王座決定戦では、英国の地で力なくTKO負けを喫した。抜群のセンスと才能を有しながらどこか勝負弱く、“ガラスのエース”という言葉を連想させるボクサーだった。

【次ページ】 「それしかない」という小國の奇襲。

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