松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹、目に見えるほどの変化。
ショットも、メンタルも、ピンポンも。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2017/09/07 11:40
最終日の18番で大きく曲げたときにも、ルール委員と自ら英語で話し、結果的に木の合間を縫う豪快なショットで危機を切り抜けた。
外から見て分かる変化は、本人にとっては極端な変化。
はたから見れば、取材の際の答え方の変化など、取るに足らない些細なことに思えるかもしれない。だがたとえ小さな変化であっても、周囲から見て取れるぐらい何かを変えるためには、本人にしてみれば極端なぐらい大きく変えようとしない限り、変化は認識されないものだ。
スイング改造に挑んだことがあるゴルファーなら思い当たるであろう。オーバースイングを修正しようと試みるとき、自分ではトップの位置を少し低くしてスイングをコンパクトにしたつもりでも、周囲からは「いつもと変わらないオーバースイング」にしか見えないことが多い。ハーフスイング、いやそれ以下ぐらいのつもりで極端に小さく振ろうとしない限り、自他ともに認める「変化」は、まず起こらない。
そう言えば、松山のスイングは「トップで静止する独特の間がある」と米国のTV中継では毎回のように言及されているが、いつしか彼の「独特の間」は、トップのそれとスイング始動前のセットアップのそれとで時間配分が変わりつつある。
そんなふうに変化が傍らから見て取れるのだから、松山自身はかなり大きな変化を心がけ、それが日々、少しずつ小さな変化となって表れている。その積み重ねが、いつしか変化から成果へ変わるのだ。
小さな変化は、大きな成果への前進。
それと同じプロセスを、松山はメンタル面の向上にも応用し始めているのだと思う。努力はすぐに大きな実にはならず、小さな芽が出ればラッキーであることを、彼はさまざまな体験から学び取っているはずで、だからこそ芽吹いたものは辛抱強く育んでいる。
デル・テクノロジーズ選手権で辛くも予選通過を果たし、「2週連続(予選落ち)は嫌だった」と言いながら安堵の笑顔を見せた松山は、決勝2日間ではショットとパットの好感触を追求しつつ、忍耐の36ホールをプレーした。
3日目は「ショット、パットとも徐々に良くなり始めた。明日も、もう1回同じようなことをやって、どういう結果が出るか。楽しみです」と前進を目指した。
そして、5アンダーの好スコアを出した最終日は「ティショットはまだ不安があるけど、アイアンは方向性がだいぶ出てきた。もっといいパットが打てれば、もっと楽にポンポンポンとスコアが伸ばせるし、ショットにも影響が出てくると思う」と、小さな手応えに頷き、さらなる小さな前進に希望を抱いていた。
小さな変化は大きな成果への着実な前進。たくさんの変化に溢れる松山は、これからどこまで前進していくのだろうか。期待は膨らむばかりだ。