松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹、目に見えるほどの変化。
ショットも、メンタルも、ピンポンも。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2017/09/07 11:40
最終日の18番で大きく曲げたときにも、ルール委員と自ら英語で話し、結果的に木の合間を縫う豪快なショットで危機を切り抜けた。
気持ちの切り替えの早さは、大学時代から?
根っからのアスリートゆえ、戦い終えた直後に喜怒哀楽が溢れ出すことは往々にしてある。だがターナー氏も言う通り、松山は多くの場合「30分でOKになる」。卓球に興じたときは1分でOKだった。
「松山は昔から気持ちの切り替えは早いですよ」と、彼の母校、東北福祉大学ゴルフ部の阿部靖彦監督から聞いたのは2011年マスターズのときのこと。だがプロになり、米ツアー選手になり、「世界のマツヤマ」になった昨今、彼はさらなる向上を目指し、メンタルコントロールを自分なりに行っている様子である。
ブリヂストン招待の際は「あんまり怒らないでやってみよう」と心に決め、4日間ずっと穏やかな表情でプレーして、見事に勝利を収めた。その成功体験は、正しい方向へ向かいつつあることを彼に実感させたのだと思う。
とはいえ、惜敗の悔し涙や予選落ちの悔しさは、どうしても抑えきれなかった。だが、それすら瞬間的なものと化し、すぐさま前を向いていく。そんな彼の努力があちらこちらに見て取れる。
以前の松山は、取材者の質問に時々ムッとした。
たとえば日本メディアの取材に答えるとき、以前の松山は自分の感触を指していない質問にムッとすることが多かった。フェアウェイを捉えていてもショットの感触は悪かったというとき、「フェアウェイを捉え続けて、ショットは良かったですね」などと言われると、彼は間髪入れずに「良くないです」と強い語調で否定していた。
だがデル・テクノロジーズ選手権のときは、同じ状況になっても「それは結果にすぎません。気分は全部ラフです」と、やや冗談めかしながら穏やかな口調で答えていた。
そのとき、彼の気分はアンハッピー。そこで怒れば、気分はさらにアンハッピーになっていく。そうはさせず、どうにかしてハッピー方向へ転換させ、翌日へ、今後へ、少しでも前向きにつなげていく。そのための努力を彼は地道に行なっているのだと思う。