松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

松山英樹、目に見えるほどの変化。
ショットも、メンタルも、ピンポンも。

posted2017/09/07 11:40

 
松山英樹、目に見えるほどの変化。ショットも、メンタルも、ピンポンも。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

最終日の18番で大きく曲げたときにも、ルール委員と自ら英語で話し、結果的に木の合間を縫う豪快なショットで危機を切り抜けた。

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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Sonoko Funakoshi

 8月の世界選手権シリーズ、ブリヂストン招待で優勝した松山英樹は笑顔を輝かせていた。翌週、全米プロでメジャー初優勝に迫りながら惜敗した松山は悔し涙を流した。

 その翌々週から米ツアーのプレーオフ・シリーズが始まり、第1戦のノーザントラストで予選落ちした松山は、口をへの字に結んだまま、無言でコースから去っていった。

 2013年から世界への挑戦を開始した松山が、ラウンド後の取材に答えずして去ったのは、驚くなかれ、このときが初めてだった。

 いや、答えなかったのではなく、答えたくても言葉が出ないほど、あのときの彼は自分のゴルフと自分自身に腹が立っていたのだと思う。だが「ヒデキは30分後には、もうOKだった」と、通訳兼マネジャーのボブ・ターナー氏が後日、教えてくれた。

 プレーオフ第2戦のデル・テクノロジーズ選手権でも初日に42位と出遅れた松山は険しい表情を見せた。

 フェアウぇイを捉えたのは5回だけ。パー3の3番ではグリーンを外した上に3パットしてダブルボギー。4番でバーディーを奪い返したが、6番、17番でボギーを叩いて後退。それでもパー5の18番では第2打をピン1メートル半に付け、見事なイーグルで締め括ったが、「あれはたまたまです。よく1オーバーで回れたなという感じ」と自嘲気味に振り返った。

 8月のビッグな優勝と翌週のメジャーでの優勝争いで「まだ疲れが残っているのでは?」と問われても「はい、そうなんです」とは言わない松山である。

「それはない。技術的な問題です」と言い切り、「明日はどうにかして予選を通りたい」の一言を口にすると、足早にクラブハウスへ入っていった。

「おい、見ろよ。マツヤマだ!」「ピンポンしてる!」

 だがそれから1分もしないうちに、卓球に興じる松山の姿が窓越しに現れた。相手をしているのはターナー氏。ゴルフクラブではなく卓球ラケットを握った松山は、窓にかかるブラインドの向こう側で、楽しそうな笑顔を溢れ返らせているのがわかった。

 クラブハウスから出てきた米国人記者は「マツヤマがピンポンしているぜ」と驚きの声を上げた。選手たちにサインを求めるオートグラフエリアは、遠目ではあるが、“窓辺の松山”を眺めることができる絶好のビューポイントだった。

「おい、見ろよ。マツヤマだ!」「ピンポンしてる!」「えー、冗談だろ?」「うわー、本当にヒデキだ」「笑ってるぜ」

 険しい顔でクラブハウスに入っていった松山を見ていたからこそ、彼の瞬く間の変化に誰もが驚き、目を疑っていた。

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