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武藤嘉紀の考え方は180度変わった。
「今はね、頼むよ呼んでくれと思う」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2017/08/29 07:00
原口、久保、乾らがひしめく3トップの両サイドだが、武藤嘉紀の裏へ抜ける力は独自の武器と言えるだろう。
「ミスしてもいいから自分の力を100%」
「やっぱり、ポジティブな考えを持っていないと、前向きなプレーができないわけよ。前向きなプレーができないというのは、要するに自分らしさを失うということ。自分らしさを失ったら、その時点で勝負する土俵に立てていない。それはもったいないでしょう。ミスをおそれて自分の力を100%出せないくらいなら、ミスしてもいいから自分の力を100%出そうと考えるようになったんですよね」
ターニングポイントとなったのは、今年の4月5日、RBライプツィヒ戦だった。67分から途中出場するも、チームは14分後に失点して1-3と2点のビハインド。その時点で、チームにはあきらめムードが漂っていた。
「あの試合は途中から出て今日はチームが負けているし、とにかく自分だけでも結果を残そうと思っていたんですよね。とにかく、自分で仕掛けていって、自分のためにやろうと思っていた。そこでなんかきっかけがつかめて、気持ちがやっぱり大事かもしれないと思うようになった」
この試合、後半ロスタイムに武藤はゴールを決めた。チームは敗れたものの、それまでの厄を取り払うような一発となった。
「呼ばれないとおかしい」と言われるレベルの活躍を。
そこからは、残留争いに巻き込まれるシーズン最終盤の8試合で3ゴール、2アシストを記録した。
それでも、6月の代表戦のメンバーからはもれてしまった。
「監督というのは好みもあるし、いくら試合に出て結果を出していても、呼ばれないときは呼ばれないじゃない。じゃあどうするか、ということでしょう。これだけ結果を出しているんだから、呼ばれないとおかしいとみんなに言われるくらいに突き抜けないといけない。結局それって、自分自身の進化のためにも必要なことでしょう?
自分で仕掛けられるところでパスを出して、良い方向にいけばいいけど、パスを出したあとに味方がミスをするかもしれないし。そうなったら結局、自分のパスも意味がなくなってしまう。それなら自分で打って外した方が良いでしょう、と。今はそれくらいにエゴイストになれているし。結局ね、コンディションを上げたいと思っても、練習でも試合でも自分から仕掛けていかないと、上がっていかないわけよ」