炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープ“谷間の世代”の象徴として。
中田廉と一岡竜司、中継ぎの本望。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/08/28 17:00
2017年夏の甲子園で準優勝した広陵出身の中田。地元の強豪校から入団した経緯もあり、ファンの声援も大きい。
意図して「力みながら投げる」練習に取り組んだ。
一岡の登板数は8月24日時点で、中田とほぼ同じ46試合。そこにブルペンで肩をつくり、気持ちを高めた回数は含まれない。抑えやセットアッパーとは違い、登板場面を予測して準備する難しさがある。貢献度や献身度、心身のダメージは登板試合数やイニング数、球数では測れないものがある。だからこそ、燃えるものもあった。中田はこう言っていた。
「毎年こういう投手はいる。昨季は(今村)猛が頑張っていた。今年は僕がやらせてもらっているけど、目指すところは勝ちパターンの7、8、9回で投げたい。でもそこで結果を残さないとそこでは使ってもらえない。まずはしっかり、この役割を全うしたい」
春季キャンプからブルペン投球では、ただ投げ込むのではなく、無死満塁などのピンチの場面を想定し、意図して「力みながら投げる」練習に取り組んできた。マウンドでは闘争本能をみなぎらせながらも冷静さを保つように努めた。
「気持ちばかりが先行してもいけない。落ち着いて投げないと。最低限のことだけ。一番やってはいけないことから消して考えながら投げている」
緊迫した空気にのまれないようプレートから離れたり、ロジンバッグを握ったりと「自分のペースに持ち込んでいく」ことを心掛けてきた。
そして酷な役回りもチームのため、自分のために受け入れ、身を粉にしてきた。
「僕とイチがしっかりしていけば、ザキと猛につないで勝ちにつながる重要な役割だと思っている。イチもそう思っていると思う。今年はそこを全うしたい」
投球の途中まで「0」、リリース時に「100」の投法。
熱い中田とは対照的に、一岡は谷間の世代を笑顔で受け入れている。
「中途半端ですよね。でも、取り上げられない程度が一番いいんです。こっそり1年間終わるのがベストです」
こう笑い流すが、一岡もまたポジション争いとともに、シーズンを投げきるための自己改革を行っていた。
5月31日の西武戦に登板し、1回を無失点に抑えるも、2四球を与えた。制球の乱れとともに、無駄な力みを感じていた。足の上げ方とともに投球の発想を大胆に変えた。
「全力で投げない」
球速は140キロ後半を計測しており、当然手を抜いているわけじゃない。それでも「キャッチボールの延長で投げている感覚」と言う。投球動作の途中までは「0」の力をリリース時に「100」にする脱力投法。
「これまでは脱力しようと思ったら球速も1、2キロ落ちていたんですけど、今はそれがない。指のかかりも今の方がいい。足場が合わないこともなくなった。連投しても疲れにくくなった」