スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ネイマール売却290億円が無駄金に?
バルサフロント、強化戦略が迷走中。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2017/08/19 07:00
スペインスーパー杯でレアルに完敗。ネイマール離脱に続き、スアレスも負傷離脱し、序盤戦の“メッシ依存”は避けられそうにない。
ベッラッティ獲得が難しいと見るや、フィジカル系に。
セルジの違約金は4000万ユーロ。つまり、バルサの意思に反して引き抜かれた場合でも、パウリーニョの移籍金と同額の金しか懐には残らない。いったいフロントはこのことについてどこまで危機感を抱いているのだろうか。
そうでなくともバルサの中盤は人員過多が問題となっている。それでも敢えて補強するのならば突出したレベルの即戦力を獲るべきであり、ネイマールを取られた時と同じ方法でパリ・サンジェルマンからベッラッティを引き抜くくらいのことをするべきだ。
バルサの中盤に本当に必要なピースは、シャビの退団以降不在のままとなっているオーガナイザーだったはずだ。だからこそクラブはベッラッティの獲得を今夏の最優先事項としていたのではなかったのか。
ベッラッティは失われつつある中盤の支配力を取り戻すためのキーマンだった。それが彼の獲得が難しいと見るや、とりあえず今季も昨季のスタイルを継続しようとフィジカル系選手の補強に転換したのだとしたら、方向性などあったものではない。
劣化版ネイマールを何人も補ったところで……。
それに近年のバルサがトランジションの展開で高い得点力を発揮してきたのは、無尽蔵のスタミナを誇るネイマールが90分間を通して長距離のスプリントを繰り返していたからだった。そのネイマールを失い、彼の劣化版と呼べるような選手を補ったところで、同レベルの攻撃力を保つことは難しいだろう。
バルサは昨夏、主力組の立場を脅かすほどのレベルにはないバックアッパーを何人も補強した。その結果、センターバックの定位置を掴んだウムティティを除く多くの新戦力がろくに出場機会を得られぬまま、戦力として計算できない余剰人員となっている。
夏のマーケット終了まであと2週間。もしフロントが同じ過ちを繰り返し、ネイマールの売却で得た貴重な資金を無駄にするようなことがあれば、いよいよソシオたちは黙っていないだろう。