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ボールを持たずともチームを操る。
ジュビロの“俊輔効果”とは何か。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images/J.LEAGUE
posted2017/08/03 11:00
中村俊輔に注目が集まる陰で、川辺や川又らもキャリア最高のパフォーマンスを発揮している。
数字よりも、他の選手に与えた影響が大きい。
昨シーズンを13位で終えた磐田は今季、前線で身体を張れる川又、ウズベキスタン代表の守備的MFムサエフ、そして中村俊輔を獲得。しかし12節を終わった時点では、4勝3分5敗の10位でしかなかった。俊輔のゴールもわずか2得点。数字からは“俊輔効果”を見て取ることはできない。
たとえば勝利した川崎戦でも、前半の俊輔のボールタッチ数は16回だけだ。他の試合でも次々と配球するというよりも、その運動量とポジションで攻守のバランスをうまくとるプレーのほうが強く印象に残っている。
しかし川崎戦で2ゴールを決めた21歳のボランチ、川辺の成長はまさに“俊輔効果”だった。
「常に俊さんから直接パスをもらおうとしてます。今日はそれがダメで、俊さん、堅碁くんと渡って、それを先制点にできたのは大きかった」
広島からレンタル中の川辺が今季も磐田残留を決めたのは、俊輔の加入があったからだ。
「俊さんに預けて前へ出ていけば、チャンスになるシーンが多い。俊さんは本当にミスをしないし、みんながボールを預ける選手だから、僕もそういう選手になりたい。ボールタッチ数が少なくても、そのなかで高いクオリティを発揮するのが一流だと思うし、堅碁くんもそうですけど、俊さんを見て学ぶことが多い。そういう選手がそばにいるから、自分も今日結果を残すことができたと思います」
他の選手の弱点をかばいあうジュビロのスタイル。
ボランチの川辺と俊輔は、同じ右サイドでコンビを組むことが多い。俊輔にボールが収まると川辺が前線へと走り出すのだ。2人の良好な関係は、「僕のネガティブな部分を駿がつぶして、駿が持っていないものを僕が出す」という俊輔の言葉からも伝わってきた。そしてそれが2人だけの関係ではないと俊輔が話す。
「アダ(アダウイトン)が持っていないものを川又が、川又が持っていないものをアダがという風に、チームメイトのポジティブじゃない部分をカバーして、他の人が色を出しやすい状況を作るというのを、みんながわかってきていると思う。僕も、今日は別に何もやっていない。ボールも触っていないし。それでも勝ちに持っていく術を、個人じゃなくてチームとしてどう見つけていくのかという部分で、今は勉強になっている」