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MotoGPの今季前半戦総まとめ。
優勝者続出で空前のカオス状態に!
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2017/07/23 08:00
今季前半戦最後の第9戦ドイツGP開幕前の会見にて。左からフォルガー、ロッシ、ビニャーレス、ドビツィオーゾ、マルケス、ペトルッチ。
MotoGPから7年間も離れていたブランク。
見ているファンには、まったく予想のつかないわくわくするシーズンになっているのだろうが、選手やチームにとっては、タイヤパフォーマンスの予想がつかず、マシンのセットアップに苦労するシーズンである。まさにストライクゾーンが見えない状態でレースを続けることになり、フラストレーションも大きい。
初日のフリー走行で、すべてのコンパウンドのタイヤテストを終えてしまえば、だいたいの結果が見えてしまうことも多い。そのため、優勝争いをしてしかるべき選手たちが、「今回は5位以内」「今回は表彰台を目指す」といったかなり具体的な目標をレース前に掲げることも多くなってしまっている。
こうして大混戦になっているのは、ミシュランタイヤのパフォーマンスにあると書いてきたが、しかし、2輪のロードレースでもっとも長い歴史と実績を誇るミシュランの技術力の高さに異論を挟むものはいない。
高いグリップ力、高い耐摩耗性など、ブリヂストン、ダンロップとの3社によるタイヤ戦争時代は、ライバルメーカーが真似のできない高いパフォーマンスのタイヤを供給してきたのだ。それがこういう結果になっているのは、MotoGPから離れて7年間のブランクを縮めようと急ピッチで開発を進めていることにあるようだ。
新開発の「左右非対称コンパウンドタイヤ」。
タイヤというのは、通常、リア、もしくはフロントと、順番に別々のメニューで開発していくのが常套手段だが、現在のミシュランは、前後同時に開発を進めているという。
さらに、1社供給ということで、すべてのライダー、メーカーのリクエストに応えようと次々に課題にチャレンジしているところである。
勿論、ライダーや、ホンダとヤマハ、そしてドゥカティやスズキといったメーカーの要望はそれぞれまったく違う。そういう意味では、MotoGPに復帰して2年目のシーズンを迎えるミシュランの仕事量は、タイヤ戦争時代よりもハイレベルなものだと言ってもいい。
特にシーズン中盤戦に投入してきたフロントタイヤの左右非対称コンパウンドは、ミシュランとしては今季もっとも大きなチャレンジとなっていたが、転倒者が続出するなど、ライダーたちから不評を買うことになっていた。