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転倒寸前のバイクを起こす超絶技巧!!
MotoGP、マルケス/ホンダの偉業。
posted2017/11/29 08:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
MotoGPの2017年シーズンは、24歳のマルク・マルケス(ホンダ)が、アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)と最終戦までもつれこんだ戦いを制し、2年連続4回目のチャンピオンに輝くこととなった。
最終戦でのタイトル決定のシナリオは「マルケスが11位以上でフィニッシュすれば自力チャンピオンが決まる」というもの。
そのマルケスを21点差で追うドビツィオーゾは、優勝して、かつ、マルケスが12位以下に終わらなければならないという厳しい条件だった。
最終戦の舞台となるバレンシア(スペイン)は、マルケスが得意とするサーキット。対してドビツィオーゾは、このサーキットとの相性は良くなく、マルケスが12位以下に終わるよりもドビツィオーゾが優勝する可能性の方が低かった。実際、予選で今季8回目のPPを獲得したマルケスに対してドビツィオーゾは9番手に低迷。マルケスのタイトル獲得はほぼ確実に思えた……。
しかし、今年最後のグランプリは「レースは何が起こるか分からない」という言葉を感じさせるドラマティックなレース展開となった。
オーバーランで転倒寸前となるも……。
今季8回目のPPから好スタートを切ったマルケスは、オープニングラップを制し3周目までトップを走るが、それからは、タイトル獲得を意識した走りでヨハン・ザルコ(ヤマハ)を先行させ2番手へと後退する。
以下、ダニ・ペドロサ(ホンダ)、ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)、ドビツィオーゾと続き、この5台がトップグループを形成。大きな動きがないまま周回を重ねた。
後半の23周目に入ると、ペースの上がらないザルコを交わし、再び、マルケスがトップに浮上する。
その直後の24周目の1コーナーでマルケスは、「ヨハンの激しいブレーキングを警戒していつもよりブレーキングを遅らせた」ことが災いし、フロントタイヤがスライドしてオーバーラン。転倒寸前の滑りをなんとか回避するも、グラベルに飛び出し、コースに復帰したときには5番手へとポジションを落としていた。