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武藤嘉紀は“もやもや”してる?
「圧倒的な存在感? 間違いない」
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2017/07/20 10:30
ドイツでの武藤嘉紀の溶け込み方、人気の度合いは、日本から想像する以上のものがある。あとは1年通して活躍するだけだ。
プレシーズンから、異様に厳しい練習生活。
だが武藤は、そんな思いを抱えているのかいないのか。プレシーズンの激しい練習に身を投じていた。ゲーム形式を見ても、合間のジョッグを見ても、おそらく状態は良いのだろう。先陣を切って走り回っていた。
練習後は、流れる汗をぬぐいながらファンへのサインや写真の対応をしつつ、「やばいっす」とまだ乱れる呼吸のまま絞り出した。日陰に移動し、わずかな涼を求めて、よりひんやりとした手すりを探し、体勢を整えながら話を始める。
「(練習は)めっちゃハードです。しかも1部練、2部練って一日置きのくりかえしで、だいぶ厳しいです。だいぶ新しい選手も入ってきて、なんていうんだろ、競争意識があるのかなと思うけど。うん。まあでもかなり良い雰囲気でできてるんじゃないかな。自分自身も体調もめっちゃいいし、コンディションもいいから」
日本からトレーナーを完全な専属契約で呼び寄せる。
マインツでの1シーズン目の約半分、そして2シーズン目の昨季も3分の1ほどを負傷で棒に振った武藤は、自分の身体と真剣に向き合うことを強いられた。怪我をしない身体作りも当然だが、万全の時であっても怪我への恐怖も克服しなくてはならない。そのために、まずは周辺環境を整えた。
「ドイツで二人三脚でできる個人トレーナーをつけました。とにかく怪我しない体作りをしようと思って。ほんと細かいとこまでしっかりトレーニングしたい。小さいところだけど、足の裏の筋肉とかもそう。こっちは下(地面)が緩いし、芝は長いし、“靴でつかむ”感覚を得るための筋肉を鍛えたり」
日本人選手が日本人のトレーナーを求めるというのはよくあることで、日本から旧知の人物を定期的に呼ぶというのが通常だ。とはいえ例えばドイツであれば、3カ月の観光ビザが有効な期間のみ滞在してもらうか、常駐するのであればトレーナー自身が現地で治療院を開くなどするかというのが、他の選手たちとトレーナーの付き合い方。だが、武藤の場合はちょっと違う。
「完全に日本からドイツに呼びました。昨季後半、怪我が治った頃かな。調子が上がってきた頃から始めたことです。そこから全部みつめなおして、どこのバランスが悪いとか、全部把握して」