スポーツ百珍BACK NUMBER
藤井四段は29連勝、巨人は13連敗。
勝ち続けも負け続けもどっちも辛い!
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byTadashi Shirasawa
posted2017/07/16 07:00
鳴り止まないシャッター音に身を置きながらも、冷静に感想戦に臨む藤井四段。中学生離れした落ち着きと勝利数が、さらに大きな注目を生む。
生涯不敗のメイウェザーという化け物。
テニスでは、ジョコビッチが2010年から2011年に43連勝、フェデラーは2006年から2007年に41連勝をマーク。サーフェス別で分けると、フェデラーは芝コートで65連勝、ハードコートで56連勝を記録している。そしてナダルはクレーコートで81連勝と“赤土の帝王”ぶりを発揮。2017年に復活を遂げたフェデラーとナダルは、連勝という視点でもやはり伝説なのである。
そしてデビューから引退まで全勝、というケースもある。それはボクシングのフロイド・メイウェザー・ジュニア。1996年のプロデビューから足掛け20年間にわたって積み重ねた戦績は、49戦49勝無敗という圧巻の成績。
ただそのうちKO数は26で、2015年に注目されたマニー・パッキャオ戦で見せた徹底したようなアウトボクシングには“臆病者だ”という批判も多い。勝ち続けるためにはリスクを抑えるのがポイントなのかもしれないが……。現役復帰した2017年8月には現UFC王者コナー・マクレガーとのボクシングマッチで「50連勝」の大台に乗せるのだろうか。
3年がかりで負け続けたピッチャーも……。
続いては連敗だ。「今さら暗黒時代を蒸し返さないでくれ」と憤るファンもいるかもしれないが……こちらは主な連敗記録を箇条書きする。
将棋:野本虎次八段 30連敗(1999年~2002年)
J1:京都 17連敗(1996年)
プロ野球:千葉ロッテ 18連敗(1998年)
野球投手:権藤正利 28連敗(1955~1957年)
連敗を続けたとはいえ、野本八段は将棋界の“年間リーグ戦”にあたる「順位戦」でB級2組に所属経験がある実力者だった。ちなみに藤井四段のデビュー戦の相手で「神武以来の天才」と言われた加藤九段も1998年から1999年にかけて21連敗、引退直前にも23連敗を喫している。それでも77歳まで現役を続けたのだから、負け続けてもなお偉大と言える。
J1昇格1年目だった'96年の京都は、シーズン途中にラモス瑠偉を補強するなど懸命に戦ったが、17連敗。しかも延長戦での敗戦は17敗目だけで、あとは90分での力負けだった。ちなみに対戦相手の得点者を見ると三浦知良(V川崎)、中田英寿(平塚)、スキラッチ(磐田)らの名前が並び、時代を感じさせる。
ロッテについては、連敗記録更新となった17連敗目の試合で、当時エースの黒木知宏が9回にリリーフとして登板したものの同点本塁打を浴び、マウンド上で動けなくなるシーンを覚えている人もいるかもしれない。しかし実は、シーズン終了してみると、最下位とはいえ優勝した西武とのゲーム差は9.5。勝敗を見ても61勝71敗3引き分けと、圧倒的に力が劣っていたわけではない。
実力は劣ってないはずなのに「勝たないと」の気持ちが空回りする。スポーツの世界では、上手くいかない時の“あるある”ではないだろうか。