スポーツ百珍BACK NUMBER
藤井四段は29連勝、巨人は13連敗。
勝ち続けも負け続けもどっちも辛い!
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byTadashi Shirasawa
posted2017/07/16 07:00
鳴り止まないシャッター音に身を置きながらも、冷静に感想戦に臨む藤井四段。中学生離れした落ち着きと勝利数が、さらに大きな注目を生む。
勝ち続けるプレッシャーも辛いもの、らしい。
2001年12月の全日本選手権準決勝・山本聖子戦に負けて以来、個人戦で勝ちっ放し。“霊長類最強”とのニックネームがすっかり定着した吉田の連勝は、リオ五輪決勝で止まった。試合後のインタビューで「取り返しのつかないことをしてしまって……」と号泣しながら話したシーンは、勝ち続けねばならない重圧を背負っていたことを痛いほど感じさせた。
また吉田と同じく田村も、バルセロナ五輪決勝に敗れた後に始まった連勝記録が、アトランタ五輪決勝という大舞台で止められている。
同じ1対1の個人競技である相撲での連勝記録トップ2は、双葉山、白鵬という時代を代表する大横綱2人だ。前者は69連勝、後者は63連勝と圧倒的。ちなみに白鵬は43連勝、36連勝を1回ずつ、33連勝を2度も記録している。歴代勝利数トップが近づくのも納得である。
シーズン通じて戦う球技はどうか。野球だとMLBでシカゴ・カブスの23連勝、日本プロ野球では南海ホークスの18連勝が最長記録だが、どちらも半世紀以上前の出来事ということでピンと来ない。
むしろ近年で言えば“個人連勝”の方が馴染み深いかもしれない。2013年に楽天を日本一に導いた田中将大の24勝(1S)の記録は鮮烈だった。ちなみにこの成績を置き土産にヤンキースへと渡った田中は2014年5月に敗戦を喫するまで、日米合わせて34連勝という途方もない勝ちっぷりを発揮した。
サッカーは連勝と強さが連動しない?
サッカーの場合、悩ましいのは「引き分け」の存在だ。Jリーグは2005年に「公式戦における『連勝・連敗』の定義」について発表して、「連勝・連敗は引き分けを挟まない」ことを明記している。そのためJ1の「最長連勝」と「最長無敗記録」の2つを紹介する。
まず純粋な連勝は、1998~99年の鹿島アントラーズが達成した16連勝だ。ただ当時はまだJリーグが延長Vゴール方式を採用しており、延長戦で勝利したのが3試合ある。
引き分けを含めた「無敗記録」を調べてみると、保持しているのは大宮アルディージャ。2012年終盤戦から2013年第10節まで21戦無敗、13勝8分けの成績を残したのは記憶に新しいだろう。しかし2012年、2013年の順位はそれぞれ13位、14位。強いから連勝する、というわけではないのが難しいところだ。
世界の有名クラブではどうか。昨季リーガとチャンピオンズリーグの2冠を達成したレアル・マドリーが公式戦40戦連続不敗を達成したが、その期間での最長連勝記録は「16」だった。さすがの白い巨人とはいえ、連勝を伸ばすのは至難の業のようだ。