酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ONと松井秀喜と、本塁打の飛距離。
昭和と平成では球場のサイズが……。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySports Graphic Number
posted2017/07/10 08:00
松井の応援歌には「ミサイルホームラン」という一節があった。球場の大型化が進んだ当時のNPBでもその飛距離は驚異的だった。
東京ドーム開場以降、一気に各球場の大型化が進む。
日本の野球史には画期をなす年がいくつかあるが、1988年はその1つだ。
昭和最後の年に、東京ドームが開場した。
日本初のドーム球場。これもすごいことだが、東京ドームは両翼100m、中堅122mあった。当時のNPBの本拠地球場が大阪球場に代表されるように、両翼90m、中堅115m前後という中で、破格の大きな球場だったのだ。
公認野球規則2.01「競技場の設定」には、1958年6月1日以降にプロ野球球団が新設する球場は、両翼325フィート(99.058メートル)、センター400フィート(121.918メートル)以上なければならないというものがある。
本来ならば他の球場も大型化すべきだったが、コストと「本塁打が減れば人気にかかわる」という理由で、NPBは小さな球場でペナントレースを続けていたのだ。
東京ドームの開場以降、球場の大型化は一気に進んだ。数年で12球団の本拠地のほとんどは、東京ドーム級の大きさになったのだ。福岡ドームや大阪ドーム、ナゴヤドームのように新設された球場があり、甲子園球場のようにホームベースを後ろに下げ、ラッキーゾーンを廃止した球場もあった。
これまで、日本の球場はアメリカの球場に比べて小さいと言われてきたが、この大型化によって、サイズはほぼ同一になった。これによって、チャイニーズホームランは絶滅した。今や、100m以下のホームランはほとんどなくなったのだ。
もし現在の規格で本塁打を換算すると、どうなる?
そこで1つの疑問が浮かぶ。
もし、868本という世界記録を樹立した王貞治の本塁打数は、現在の規格の球場ではどうなるのか?
プロ野球の公式記録には「本塁打の距離」はない。しかし公式記録員は目視で飛距離をスコアブックの欄外につけている。そして日本の野球記録データの金字塔とも言うべき故宇佐美徹也氏の『ON記録の世界』(読売新聞社)には、長嶋茂雄、王貞治の本塁打の飛距離が載っているのだ。