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借金3億円から巻き返した「海賊」。
Bリーグ横浜の“正しくない進化”。 

text by

ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byB-CORSAIRS/T.Osawa

posted2017/07/04 17:15

借金3億円から巻き返した「海賊」。Bリーグ横浜の“正しくない進化”。<Number Web> photograph by B-CORSAIRS/T.Osawa

Bリーグ初年度、最後の最後まで戦い続けたビーコルの選手とブースター。その歩みは両者をさらに近づけた。

野球畑を歩んでいた岡本に経営再建を託した。

 当時の石合はスタッフの人員不足から来る激務で、体力的にも精神的にも限界を感じていた。優勝を一つの区切りとして、ビーコルを離れようと考えていた。

 しかし、だ。

「なぁ、チームに残ってくれよ。オレはな、オマエくらいの年齢のとき、会社からは全く必要とされなかった。でも今のオマエは会社から、ものすごく必要とされている。それって、すごいことなんだぞ」

 石合を翻意させる言葉をかけたのが、岡本だった。

 岡本はビーコルの運営会社である大手広告通信社に新卒で入社後、プロ野球OBを集めたマスターズリーグに携わり、茨城ゴールデンゴールズの代表を5年間にわたって務めた。そして2012年、bjリーグのオールスターでイベント統括プロデューサーとなり、バスケットボール界と接点をもった。

 そんな折り、経営危機に陥っているビーコルの手助けをして欲しいと岡本に声がかかり、2015年に代表取締役CEOに就任した。

「ボクは与えられたのは、マイナス3億円」

 現在Bリーグの社長として名が知られているのは、千葉ジェッツを躍進させた島田慎二氏だろう。彼が社長に就任したとき、クラブの預金残高には数百円しかなかったというのは有名なエピソードだが、岡本の就任時はそれ以上に逆境だった。

「ボクはね、本来であれば島田社長のやり方が正しいと思うんです。経営者としてきちんと目標をかかげ、チャレンジしていく。

 ただ、島田社長には数百円あっただけ、マシでしょう、と(笑)。ボクが与えられたのはマイナス3億円ですから。未払い金や借入金の総額が3億円の状態からのスタートでした。経営のフェーズとしてはたぶん、ジェッツからは3年ほど遅れていたと思います」

 岡本はこう続ける。

「栃木ブレックスのように地域と上手にマッチングしながら正しい道を歩むチームや、大企業がバックについているチームもあります。では、ボクらはどの道を行けばいいのか。ブランディングをきっちりして、そこを軸にして進んでいかないと考えたんです」

 横浜市の住民の動向やマーケット調査、本拠地である横浜国際プールがある都筑区の成り立ちにいたるまで入念に調べた。

「『東京なんかとは一緒にしないで欲しい』という横浜の人たちが抱えるプライド。大都市でもある横浜の多様性。それらを踏まえて、あえて“正しくない進化”をしてやろうじゃないかと思ったんですよね」

【次ページ】 「『海賊』というのは精神論だと思うんです」

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