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大学野球“地方全盛”に新たな波。
岡山、四国、九州からエース発掘!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2017/06/10 07:00
高校時代は何者でもなかった投手がチームのエース、そして注目株となる。小川一平は地方リーグ全盛時代の象徴的な存在だ。
岡山商科大・近藤、四国学院大・小久保は必見の投手。
そして、異変は今年も続いている。'97年にアマ5冠(春秋のリーグ戦、大学選手権、明治神宮大会、アマチュア王座決定戦)の偉業を達成した近畿大が岡山商科大に2-4、首都大学リーグの帝京大が桐蔭横浜大に3-5、東北福祉大が四国学院大に0-1で敗れているのだ。四国地区大学リーグの勝利は'05年の同校以来12年ぶりで、地方勢の雄、上武大は、福井工業大を相手に5-4で2回戦を勝ち上がったものの、延長タイブレークに持ち込まれる辛勝だった。
ニューウエーブ躍進の陰には好投手の存在が見逃せない。岡山商科大には近畿大戦でストレートが最速150kmを計測した近藤弘樹(4年)、四国学院大には東北福祉大を5安打完封に退けた小久保気(こくぼ・きよし/4年)というプロも注目する本格派がいて、少ない得点を守り切って勝ち上がってきた。
近藤はストレートの速さばかり取り上げられるが、カーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップなど球種が豊富。小久保も東北福祉大戦で計測した最速144kmのストレートよりフォークのキレが目立った。「140km台後半」とか「150kmを超える」と表現されるストレートの速さはマスコミの格好の材料になるが、相手打者を封じ込める最大の武器は変化球とコントロールにある。
東海大九州キャンパスに小川一平という好投手が。
1回戦で天理大に敗れた東海大九州キャンパス(九州地区大学リーグ南部)にもストレートの速さとともにキレのある変化球で魅了する本格派投手、小川一平(2年)がいて来年以降の躍進を期待させた。
東海大九州キャンパスは昨年4月の熊本地震で春のリーグ戦は出場辞退に追い込まれ、地震後には「練習後のミーティングに参加しなかったり、練習途中でもグラウンドの外に出たりと、考えられない行動が増えた」と報道されたこともあった。
山崩れで崩壊した阿蘇大橋の近くにあるグラウンドは今も使えず、出身地の神奈川県から単身で乗り込んだ小川にとって心休まる時間でなかったことは想像に余りあるが、天理大戦では6回途中からリリーフでマウンドに立ち、素材の良さをアピールした。