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大学野球“地方全盛”に新たな波。
岡山、四国、九州からエース発掘! 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2017/06/10 07:00

大学野球“地方全盛”に新たな波。岡山、四国、九州からエース発掘!<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

高校時代は何者でもなかった投手がチームのエース、そして注目株となる。小川一平は地方リーグ全盛時代の象徴的な存在だ。

横須賀工時代は県2回戦敗退のレベルだったが……。

 ストレートは自己最速148kmに迫る146kmを計測し、さらによかったのが135km程度で鋭く落ちるパワーチェンジという球種。サークルチェンジに似た握りから人差し指と中指の間から抜くボールで、7回表の無死三塁のピンチでは後続の3人からこの球種で2三振を取って切り抜けた。

 地震のショックもあり、一時は体重が5キロ落ちたと言うが、ウエートトレーニングと入念なストレッチは毎日欠かさず、体幹強化と故障の予防に配慮している。

 小川が横須賀工業に在籍していた3年間、1回戦を勝ち上がって2回戦敗退というのが夏の神奈川大会での同校の成績。社会人から声がかかっていたわけでもないようだ。つまり、東海大九州キャンパスから声がかからなければこれほどいい選手でも高校卒業と同時に野球生命が断たれていた可能性がある。

 あるスカウトに聞くと、「(横須賀工業時代も)いい投手でした」と言うが、獲得に向かったという言い方ではない。そういう無名の選手を獲りに行くところに東海大九州キャンパスの意欲を感じるし、近年のニューウエーブ躍進の背景も見えてくるのである。

 課題は78kgからの体重増加とストレートを150kmの大台に乗せること。さらにスライダーとツーシームを習得し、縦の変化にバリエーションをつけることだと明快。大学進学を後押ししてくれた親のためにもプロに行きたいと言う。

キャッチャーの伴善弘もプロレベルの強肩の持ち主。

 ちなみに、同校のキャッチャーの伴善弘(3年)も神奈川の横浜隼人出身である。盗塁を阻止したときのスローイングが、筆者の計測で1.77秒というとんでもないタイムだったからである。また二塁けん制でも、ひと呼吸遅れてからの送球にもかかわらず2.08秒を計測している。これらのタイムはプロレベルで見てもとんでもないくらい速い。

 このバッテリーが来年も健在で、伴を含む天理大戦のスタメン野手4人が3年生という若さ。わくわくしながら彼らの成長と東海大九州キャンパスの活躍を見守っていきたい。

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