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五郎丸歩が「酒井宏樹、カッコイイ」。
フランスで2人の友情が育った理由。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byNanae Suzuki
posted2017/06/09 13:10
UAE戦で久保の先制点をアシストしたスルーパスが象徴的だが、酒井宏樹がプレーの幅を広げているのは日本の右サイドにとって大きい。
サイドバックはチームの出来に左右されるから……。
2016-2017シーズン、酒井はマルセイユで移籍1年目から不動のレギュラーに定着した。3013分というリーグ戦出場時間は、チーム2位の数字である。27歳の日本人右サイドバックは、なぜ9度のリーグタイトルを誇る名門で、すぐさま結果を出すことができたのか。同じくNumber928号に掲載されたインタビューで、本人はフランス移籍からの意識の変化をこう語っている。
「最近になって思うのは、サイドバックはチームの出来に左右されるポジションだからこそ、周りの選手と良いコミュニケーションをとれていないと、良いプレーは絶対にできないということで。そこを詰めておけば、守備でも最初の一歩に遅れなくなる。そういうことは特に、マルセイユに来てから意識するようになりましたね」
シリア戦、大迫とコミュニケーションを取り続けた。
6月7日、イラク戦に向けたシリアとの強化試合の場でも、積極的に周囲とコミュニケーションを取る酒井の姿があった。特に最前線に入った大迫勇也に対して、プレーが止まるたびに声をかける。
「やっぱり後ろの選手と前の選手の意識をすり合わせたかったので。サコ(大迫)や前線の選手がどう考えているのかを聞いていました。僕ら後ろの選手は、できるだけ前の選手に合わせたい。サコたちになるべく守備で体力を使わせず、良い攻撃ができるように。サコからは、『前線にボールが入ったときにサポートが足りないから、もうちょっとラインを上げてほしい』とリクエストされました。実際、相手のプレッシャーがすごく強いというわけではなかったので、運べるならどんどん運んできてほしい、と。
確かに、ボールを持ったときに、もっとラインを上げるべきでしたね。ちょっと慎重になった部分はありますし、イラク戦に向けて『連係面をすり合わせていこう』って思いが強くなりすぎたのかなって思います」
酒井自身も反省するように、この日の日本は、ビルドアップの局面でスムーズにパスが回らず、選手間の距離が開いた。強引に前線へ縦パスを送っては、シリアの守備網の餌食となり、48分には最終予選初戦からの課題であるセットプレーから失点も喫した。58分の今野泰幸のゴールで引き分けに持ち込んだものの、終盤にはカウンターからピンチを招くなど、イラク戦へ不安は残った。