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普通に戦えば「アジアのバルサ」。
川崎のACL8強、8戦無敗の必然性。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/05/31 16:00
ムアントン戦で2試合7ゴール。今季から指揮を執る鬼木監督のもと、これぞフロンターレという攻撃姿勢が実った。
憲剛のポジショニングはまるで「マテウスみたい」。
前半の試合運びで興味深かったのが、ボランチの中村のポジショニングだろう。川崎のビルドアップは、ときにボランチの一角が最終ラインまで落ちてセンターバックと組み立てを開始するが、この前半の中村は奈良竜樹と車屋紳太郎のさらに後ろまで下がり、まるでリベロやスイーパーのような位置取りを見せていた。その姿に田坂祐介は「マテウス(元ドイツ代表・ローター・マテウス)みたいだった」と試合後に笑っていたが、中村にポジショニングの意図を聞くと、こう明かしてくれた。
「今日は、後ろ(奈良と車屋)が初めての組み合わせだったこと。そしてボールを奪われて失点したくなかったので、気持ち後ろで(笑)。相手が(ボールを)取りに来れなかったし、サイドから攻めることができていた。それで点が取れると思っていたし、ボールも持てていたので」
その言葉通り、中村が最後尾から長短のパスを正確に配給することで、いつもとは違うサイド攻撃が展開されていく。左センターバックの車屋は、中村が最後尾にいることで左サイドバックのようなポジショニングを取り、それにより左サイドバックの登里享平は左サイドハーフのような高い位置で攻撃に絡んでいる。
「右から展開したときに、左サイドがかなり空いているなと感じていました。(エドゥアルド・)ネットとケンゴさんのところでかなり引いてきていて、4バックっぽくなっていて、そこはもったいない感じもしましたが、サイドはうまく使えましたね」(車屋)
ハーフタイムの時点で「6-1」で勝負あり。
前半31分、待望の先制点が小林悠の右足から生まれる。それをアシストしたのは左サイドバックの登里である。鋭利なナナメのクサビを通したが、局面の起点を担ったのは車屋の配球だ。その意味で、してやったりの崩しだったとも言える。
先制点の直後、今度は右サイドの崩しからファーサイドに詰めていた長谷川竜也が追加点を挙げると、40分にはCKからネットがヘディングで3点目をあげ、前半終了時点でのトータルスコアは6-1。ハーフタイムの時点で勝ち上がりが決まったも同然となった。
後半には1点ずつを取り合うも、2戦合計のスコアは7-2。川崎フロンターレにとって、2009年以来となるベスト8進出となった。