Jをめぐる冒険BACK NUMBER
浦和を陥れた最下位・大宮の超対策。
布陣を変え、キャプテンを変え……。
posted2017/05/02 17:30
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
周到な準備ができたわけではなかった。4日前にルヴァンカップがあったため、対策に充てられた日数は、わずか1日――。その限られた時間のなかで用意した策が、さいたまダービーという大一番で奏功した。
4月30日に行われたJ1・9節、最下位に沈む大宮アルディージャが、首位に立つ浦和レッズを1-0で下し、今シーズン初勝利を挙げた。
たしかに過去には、下位に沈む大宮がさいたまダービーで、それまでの成績がウソであるかのような勝負強さを発揮したことが何度もあった。
だが、'13年以降は4勝1分け1敗と浦和が圧倒しているし、首位と最下位という現状の差を考えれば、大宮にとって今回は厳しいゲームになると思われた。
だが、戦前の予想を大宮は見事に覆した。
興梠へのマンマークを任されたのは、34歳の金澤。
アップセットを実現させた要因のひとつが、従来の4-4-2から5-3-2へのシステム・戦術の変更だろう。
試合前に配られたメンバーリストには、金澤慎、岩上祐三、長谷川アーリアジャスール、茨田陽生と、ボランチを本職とする選手が4人も名を連ねていた。
ユーティリティプレーヤーである長谷川は左サイドハーフでの出場が濃厚だとして、右サイドハーフは果たして誰が……と思案を巡らせていたが、そもそも4-4-2ではなかったのだ。
「トレーニングのときに渋谷(洋樹監督)さんから『マンツーマンで付くように』と言われていた」
そう明かしたのは、興梠慎三へのマンマークという極めて重要なタスクを託された金澤である。
大宮ユースの一期生で今年34歳となるベテランが、浦和の攻撃のキーマンをマークするためにディフェンスラインに入ると、残りの3人が3ボランチを形成して中央を締め、5-3-2のシステムで首位チームを迎え撃ったのだ。