沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
前から行って、差し馬の末脚を使う。
キタサン&武豊が春天衝撃レコード。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2017/05/01 11:20
前目のポジションで競馬ができる、というキタサンブラックの特性は凱旋門賞でもストロングポイントになるはずだ。
末脚勝負ならキタサンを1秒上回る必要があったが……。
勝ちタイムは3分12秒5。2006年に武が乗ったディープインパクトが樹立した記録をコンマ9秒も短縮するレコードだ。
「ディープのレコードはなかなか破られないと思っていたのですが、大幅に更新されましたね。昨年の今ごろより、はるかに強くなっています」
そう話した武はこのレース8勝目。同一JRA・GI最多勝記録を樹立した。
それにしても、強い。昨年の春天より大幅にメンバーが強化されたにもかかわらず、数段レベルの高い勝ち方をしたのだから、恐ろしい成長力だ。
自分の馬を含めたすべての馬にとって厳しい流れをつくって消耗戦にし、その苦しさに耐えながら、最後まで伸び切った。競馬は時計ではないとはいえ、これだけのスーパーレコードを叩き出したのは、自身の絶対的な強さを証明したと言える。武は、キタサンブラックの最強の形を、完全に手の内に入れた。
2着のシュヴァルグランも、そこから首差遅れた3着のサトノダイヤモンドも、道中はキタサンの5、6馬身後ろにいて、勝負どころからスパートしてかわそうとしたが、及ばなかった。5、6馬身ということは1秒ほど後ろを走っていたわけだから、スパートしたところからキタサンより1秒以上速く上がれば勝てる、という計算になる。
スパート地点をラスト3ハロン地点とすると、キタサンが35秒3でまとめたのに対し、1秒以上速く上がらなければならなかったシュヴァルグランは35秒2、サトノダイヤモンドは35秒0だった。それぞれコンマ1秒とコンマ3秒しか上回ることができなかった。
普通ならバテて末脚が鈍るような流れで先行しながら、追い込み馬と変わらぬ上がりでまとめてしまうのだから、他馬はどうすることもできない。
力が違った、としか言いようがない。
サトノダイヤモンドは、やはり、ベストより距離が長かったのか。しかし、向正面でもまだ少し行きたがっていたキタサンにとっても3200mはベストではなかった、と言えるのではないか。
前走から一気に距離が延びたことに加え、競走馬はキャリアを重ねると適性距離が短くなることがあり、今のキタサンにとっては、サトノ同様、2000mから2400mぐらいがベストなのかもしれない。それでも完勝したのは、力が違った、ということだろう。