マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
タイブレークの影響はどこに出るか。
高校野球界の超長時間練習に影響?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/05/01 07:00
1球の攻防と、緊張感。タイブレーク方式が設けられたとしても、高校野球の魅力がそぎ落とされることはない。
12時間練習では、手を抜くことだけが上手になる。
私もそうした風潮の中で、高校野球、大学野球を経験した者の1人である。
体力の限界を超えるほどの長時間の猛練習を強いられる場合、人間はどうするかというと、必ず手抜きをするようになる。
たとえば、12時間の練習を行うとすると、1時間に自分の体力の12分の1だけを出して、なんとか切り抜けようとする。12時間ずっと全力だと、死んでしまうからだ。
結果、手を抜くことだけが上手になって、あれも中途半端、これもどっちつかず……そんな私のような“出来そこない”ができてしまう。
高校野球の試合時間は現在、おおむね2時間前後。人の心身の集中力もおおむね2時間前後といわれている。
ならば、その2時間を最高の集中力で練習すれば、それが最も効果的な練習なのではないか。
勤勉な日本人のことだから、全力で2時間試合をするためには3時間は練習しないと……。いや、倍の4時間はどうしても……。
そんな話になっていくのだろうが、せいぜいそこまででよいだろう。
“大人たち”が安心したいがためなら、害ではないか?
長時間練習は選手たちが成長するために、というよりも、むしろ“大人たち”が安心したいがためで、意味があるのかないのかを考えれば、かえって害なのではないのか。
「タイブレーク導入」がそんな猛練習の繰り返しを減らしてくれないかと、正直、私は願っている。
延長戦がもとで心身の健康を損なった者がいる。一方で、今も昔もほとんど話題にならないが、練習過多がもとで心身の健康を害してしまった者の数。これらはいったい、どうなっているのだろうか?