マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER

タイブレークの影響はどこに出るか。
高校野球界の超長時間練習に影響? 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2017/05/01 07:00

タイブレークの影響はどこに出るか。高校野球界の超長時間練習に影響?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

1球の攻防と、緊張感。タイブレーク方式が設けられたとしても、高校野球の魅力がそぎ落とされることはない。

夏は決着がつくまで戦わせてほしい。

 春には先がある。

 春のセンバツの無理が意外と長く尾を引いて、最後の自己実現の場である夏に、磨いてきた腕前を存分に発揮できなかったら、こんなに悔いを残すことはない。

 その一方で、夏は決着がつくまで、エンドレスで戦わせてほしい。

 培ってきたもの全てを! と、みずからの野球のすべてを吐き出そうとするのが夏。それは、誰にも止められないし、もし万一、そこで何かが壊れても後悔する者は少ないだろう。それが私も含めて、高校野球に懸命に取り組んだ者の偽らざる“本音”ではないだろうか。

 仮に、夏に頑張りすぎて体に支障が出ても、そのあと現役を退く3年生には、秋に治療に費やせる時間がある。

 ともに戦う2年生、1年生の中心選手の体調については、これこそ、指導者が管理すべき大切な職務になろう。

陽が暮れたら「心眼」でボールを見よ、との環境。

 以前、こんな話を聞いたことがある。

 元日が練習始め、それが我が野球部の矜持。

「晴練雨練」。晴れて練習、降っても練習。陽が暮れてボールが見えなくなったら、「心眼」で見よ。いつ終わるともなく続く猛練習の中で、倒れた頭の上からどやされた爆声。

「そんなことで延長18回戦えるのかー!!」

 伝説の延長18回引き分け再試合、松山商業対三沢がそうだったように、当時の高校野球は今よりさらに決まりがきつかったから、それを猛練習の“口実”にしていた学校もあった。

【次ページ】 12時間練習では、手を抜くことだけが上手になる。

BACK 1 2 3 4 NEXT

高校野球の前後の記事

ページトップ