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「日本ラグビーは驚くべき進化だ」
ジョセフHCが語るエディーとの違い。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTomoki Momozono
posted2017/04/29 07:00
代表メンバーに鋭い視線を送るジョセフHC。エディー後のジャパンを託された責務は大きい一方で、充実感に満ちている。
彼らは「完璧」を求めすぎている気がしました。
――HCのシステムを運用していくにあたっては、選手たちがどんどん意見を出していった方がいいのでしょうね。ただ、日本人は怒られないようにと発言を控えがちですし、練習でもミスをすることを極度に恐れます。日本人のミスに対する考え方をどう見ていますか。
JJ 不安に思うのは仕方がないでしょう。オールブラックスの選手だってミスからは自由ではない。けれども、日本の選手は不安になりすぎる傾向があるかもしれません。ただ、私が伝えたいのは練習ではミスをして構わないということです。むしろ、トレーニングではミスをしていいんです。それを修正していけばいいだけの話ですから。今回もひとつ、興味深いことがありました。ゲームプランを落とし込む時のことです。まだ練習でいろいろとチャレンジする段階なのに、選手たちは頭の中でそのプランの欠点、弱点を探し出して質問を投げかけてきました。試す前に、彼らは「完璧」を求めすぎている気がしました。
――頭の中でシミュレーションするうちに、勝手にミスを作り出している。「無理だろう」と思い込んでしまう。
JJ ラグビーでは時としてそういうことが必要な場面もあります。ただし、自ら不安材料を増やし、自分の首を絞めているところもあるんです。
日本のコーチは選手に考えることを求めていない?
――いろいろなことを始める前に「地雷」を除いておきたい。たしかにそれは日本人の傾向として私も否定しません。
JJ そうしたことも、このひと月で徐々に変わってきているし、きっと慣れてくるでしょう。選手たちは考え始めています。
――急に変えることは難しいですよね。中学生、高校生の時に考える訓練を受けていませんから。
JJ これはまだ印象に過ぎませんが、日本のコーチは指示を出すのが仕事で、選手たちに考えることを求めていないのでは? と思います。選手たちはそれをやり切るだけ。けれども私たちは、選手たちにしっかりと、自分たちで考える力を養ってほしい。
――そうした力を養うには時間が必要でしょう。来年以降のことを見渡すと、どんな要素が課題として挙げられますか。
JJ たくさん、あります。ありすぎます(笑)。帰国するとトップリーグが再開します。世界で戦おうとする選手たちは、そこでどういう戦い方をしなければならないのかを意識しなければいけません。それは選手たちだけの話ではなく、トップリーグのコーチたちも学ばなければいけないことがあると思います。