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「日本ラグビーは驚くべき進化だ」
ジョセフHCが語るエディーとの違い。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTomoki Momozono
posted2017/04/29 07:00
代表メンバーに鋭い視線を送るジョセフHC。エディー後のジャパンを託された責務は大きい一方で、充実感に満ちている。
トップリーグの多くのチームが保守的だ。
――そういえばHCは、トップリーグの試合を見てがっかりした部分もある、とおっしゃってましたね。
JJ 多くのチームが保守的です。勝つために手堅いラグビーを志向していて、冒険心を持っているチームが少ない。少なすぎます。ウェールズ戦がそうだったように、ジャパンはどこからでも攻撃を仕掛ける。これは世界的に見れば「特殊なゲームプラン」です。
――たしかにウェールズ戦では松島幸太朗や山田章仁がボールを持つと、「危険な香り」がして、ハラハラしつつも、ワクワクしました。相手も肉体的にだけでなく、精神的にも消耗していた気がします。
JJ そうした意識が国内でも浸透すればいいと思いますが、もっとチャレンジして欲しいとは思います。
「チームジャパン2019」の総監督としての責任感。
――それにしても、準備期間が短かったにもかかわらず、この11月でジャパンは明らかに成長を遂げた。「失われた1年」にならずに済んだ、という安堵感があります。
JJ 最終戦で課題が浮き彫りになりましたが、それでも素晴らしい船出が出来たと思います。昨年のW杯の中心メンバーが今回の遠征に参加しなかったことは返す返すも残念ですが、新しい血が入り、様々な不安を払拭してくれました。
――伝統的な価値観を再現しつつ、新しいチームとして出発した。
JJ 選手たちは、驚くほど急速にゲームプランを理解しています。この学習能力は素晴らしい。来年、私は「チームジャパン2019」の総監督として、サンウルブズの強化にも関わっていきますし、よりジャパンの強化に直結するアラインメントを図る時間が取れるでしょう。
この遠征中の11月21日、ジョセフHCは47歳の誕生日を迎えた。選手、スタッフたちはフランスの地で祝福したが、プレゼントに選んだのは彼が生まれた年、1969年に作られた赤ワイン。
秋に手探りでスタートしたチーム作りは来年、どんな実をつけるのだろうか。
(Number916号 ジェイミー・ジョセフ「チームは驚くべき進化を遂げた」より)