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「日本ラグビーは驚くべき進化だ」
ジョセフHCが語るエディーとの違い。
posted2017/04/29 07:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Tomoki Momozono
濃密な強化合宿と強豪とのテストマッチ4連戦を経て、
大いなる一歩を踏み出したジェイミー・ジャパン。
戦い終えた指揮官は、確かな手応えを掴んでいる――。
Number916号のインタビュー記事を、全文公開します!
世界のラグビー界は激動期に入ったのか。オールブラックスがアイルランドに敗れた。アイルランドは1905年の初対戦から数え、29戦目にして念願の初勝利だ。エディー・ジョーンズ率いるイングランドは連勝を12まで伸ばし、ラグビー界の巨象・南アフリカは欧州で連敗を喫した。
そして、わが日本代表もジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)の下でようやく船出した。各国の状況を見ると、W杯後のスタートダッシュに遅れた感は否めない。下手をすれば「失われた1年」になりかねない――。4試合を終え、1勝3敗。
新指揮官はどんなビジョンを持って指揮にあたったのか。
日本は昨今のラグビー界が失った価値を体現している。
――収穫と課題。遠征も波がありましたね。
JJ(ジェイミー・ジョセフ) 4週間で多くのことを学べました。収穫は、新しい才能を発掘できたこと。一方で、チームとしてどう成長していくのか、再度考えねばなりません。
――それでもウェールズ相手に、後半34分になって同点。正直、興奮しました。まわりのウェールズサポーターは沈黙するか、「ウェイクアップ!」と叫んでいました。
JJ ビッグなテストマッチで、我々が相手にプレッシャーをかけることが出来たからこそ、赤い竜は目覚めなかったのだと思います(注・ウェールズ代表には「レッド・ドラゴンズ」のニックネームがある)。ただし、残念です。勝利を手にするチャンスはあった。それを逃してしまいました。
――ウェールズ戦は驚きと感動がありました。13-24になった時点では「引き離されてしまうのか……」と不安になりましたが、その直後に福岡堅樹の素晴らしいトライが生まれた。アルゼンチン戦、ジョージア戦では苦戦したスクラムも驚くほど改善している。今のジャパンはメンバーが変わっても、「ハート」は変わらない気がしました。
JJ ウェールズとの試合を見て、私はこのチームが昨今のラグビー界では失われてしまった価値を体現しているように思いました。
――失われた価値?
JJ 純粋に我々が立てたゲームプランを信じ、そして仲間を信じてプレーしているのが伝わってきました。選手たちの代表に対する思い、使命感は並々ならぬものがあります。短期間のうちに急速にチーム力が上がっている手応えを感じています。