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右手で触れるのはWBC球だけ――。
千賀滉大の執念は、決戦で生きる。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byNanae Suzuki

posted2017/03/21 21:00

右手で触れるのはWBC球だけ――。千賀滉大の執念は、決戦で生きる。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

今回の侍ジャパン投手陣で一番の安定感を見せている千賀。大リーガーにもフォークが通用すれば、投手としての価値はさらに高まる。

WBCでは9イニング無失点、劇的な変化の理由は?

 そして、WBCでは1次ラウンドのオーストラリア戦で2回4奪三振無失点での勝利投手となり、2次ラウンドのオランダ戦も2回零封だった。先述のイスラエル戦の先発も含め、本大会は計9イニング無失点を継続しているのである。

 千賀は自らの“気づき”で、ピッチングに劇的な変化をもたらした。

 それは、ソフトバンクとの練習試合後の夜だった。

「猫背型」になっているから、グラブの位置を変える。

 今年も含め、毎年1月の自主トレで指導を仰いでいる「鴻江スポーツアカデミー」代表の鴻江寿治トレーナーと一緒に食事をしたという。

 その席で、千賀はこんなことを言い出した。

「僕、猫背型になってきていると思うんです」

 鴻江トレーナーが唱える「猫背型」「反り腰型」は、人間を体の構造によって2パターンに分ける理論である。猫背型をシンプルに説明すれば、右骨盤は被っており左骨盤が開いている体を言う。つまり右回りはしにくく、左には回りやすい。

 反り腰型はその逆だ。右投手は、体を左に回す。

 千賀は反り腰型だった。左に自然と「カベ」が出来るタイプだ。

「なので、グラブの左手を引く動作で体を回してやらないと、いい回転が出来ない。逆に猫背型の人間がそれをやると、元々回りやすいわけですから、投球バランスを崩してしまいます」(鴻江氏)

 2人は会話を続ける中で、1つの答えにたどり着いた。

「反り腰型で左手を引かなくちゃいけないから、投球動作の際には突き出すグラブの位置を少し下げていた。だけど、猫背型になってきているから、左手の位置を少し上げて、自分でカベを作ってあげないといけない」

 次の登板から、千賀のグラブの位置は顔の高さ辺りまで上がっていた。

【次ページ】 NPB球を右手で触らないと心に決めていたが……。

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