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公道レースの最高峰、WRCが世界で
最もタフで過酷なレースと言われる理由。
text by
古賀敬介Keisuke Koga
photograph byTOYOTA
posted2017/03/30 11:00
18年ぶりの復帰にもかかわらず、序盤戦から高いポテンシャルを発揮するヤリスWRC。
<3>平均時速100km強で悪路を疾走
山道をドライブしていて、進むべき道が突然砂利道に変わったら、通常は安全のためアクセルを緩める。当然、平均速度は一気に下がる。しかし、WRCに関してはその限りではない。WRC全13戦のうち、もっとも平均時速が高いラリーはグラベルのフィンランドで、'16年の記録は127kmだった。トップ5を見ても、ターマックではないラリーが占めている。雪道のスウェーデンが3番目に速いラリーだという事実には、ただただ驚くしかない。滑りやすい氷雪路を、スタッドタイヤで走るとはいえ、平均時速113kmで走るなど、異常ともいえる世界である。
WRCのSSには、サーキットのようなエスケープゾーンは存在しない。少しでもコースを外れたら崖下に転落したり、路肩に迫る木や岩に激突することになる。滑りやすい砂利道でマシンをスライドさせながらも、コーナリングラインをセンチ単位でコントロールする技術をWRCドライバーは備えている。だからこそ、未舗装路や雪道を平均時速100km以上で走り続けることができるのだ。世界のありとあらゆる道を、いかなる条件でも全開で駆け抜けることができる。WRCドライバーが「世界でもっとも運転が巧い人々」と、言われている所以だ。