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公道レースの最高峰、WRCが世界で
最もタフで過酷なレースと言われる理由。
text by
古賀敬介Keisuke Koga
photograph byTOYOTA
posted2017/03/30 11:00
18年ぶりの復帰にもかかわらず、序盤戦から高いポテンシャルを発揮するヤリスWRC。
<4>制限時間内での車両整備
荒れた未舗装路を全開で走行することが多いラリーでは、サスペンションや駆動系に大きな負担がかかる。また、クラッシュによりボディに大きなダメージを負うことも少なくない。しかし、乗員の安全を守るロールケージと、心臓部であるエンジンさえ問題なければ、かなり酷い状態からでもラリーカーは蘇り、競技を続けることができる。
通常WRCは3、4日間にわたり競技が行われるが、サーキットレースのピットに相当するサービスパークでは、1日に数回マシンの整備作業を実施することができる。ただし作業時間は1回10~45分と限られており、制限時間を超えるとペナルティが科せられる。また、作業できるメカニックの数も制限され、その中で、サスペンションやブレーキの交換、ボディの修復作業といった大仕事をメカニックたちはやってのけるのだ。マシンがサービスに入った瞬間、マシンに組みつき、無駄のない動きでパーツを交換したり、破損個所を修復するメカニックたちの仕事は芸術的ですらある。彼らメカニックたちの真剣勝負を目の当たりにすれば、マシンの整備作業もまたラリーというスポーツの一部であると、実感することだろう。