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永木、遠藤、菊池は優秀な“卒業生”。
湘南から強豪加入、なぜ成功する?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/02/22 11:00
ゼロックス杯で永木と菊池は鹿島、浦和の一員として戦った。現在J有数の強豪で立ち位置をつかみつつある2人の土台は、湘南での日々にある。
「選手に考えさせる」ことで自主的な判断を促す。
成長させるために曹監督が大事にしているのが「選手に考えさせる」ことだ。たとえば大量失点して敗れた後に守備を修正する場合、「こうしなさい」と指示を出せば簡単に済んでしまうだろう。
ただ言われてやったことは、その場ではすぐ改善する一方で、自ら考えたものではない。そのため徐々に意識が薄れていき、数試合で元に戻ってしまうことが多い。
だからこそ、曹監督はやる気のない姿勢、イージーミス以外は選手を責めず、選手を信じ、自分で判断してプレーするように見守ってきた。それによって選手からは「とりあえずやっておこう」という無責任なプレーがなくなり、約束事を守りつつも臨機応変な状況判断をできるようになった。
浦和の菊池、鹿島の永木ともにすんなりとフィット。
その過程があるからか、個人差はあれど湘南から移籍した選手は新天地にフィットするのが早い。ゼロックス杯に話を戻すと、浦和の菊池はチーム合流から1カ月ほどだが、ペトロヴィッチ監督が驚くほどの順応性を見せた。菊池本人も「それほど困らず、フィットできている」と自信を見せる。
対戦相手の永木も、まるで長年にわたって鹿島に在籍しているかのようにチームの流れを変えた。2失点後、カウンターに急いていたチームの中で落ち着いてボールを回すように舵を取った。それが形になり始めると、最終的には相手のミスを突いて鈴木優磨が決勝点を挙げたのだ。
「湘南の選手はフィジカルが強く、適応力があり、しかも真面目なのでチームに早く馴染んで戦力になれる。監督にとってこれほどうれしいことはないですね」
鹿島のスタッフは、そう言った。