フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
平昌五輪会場で行われる四大陸選手権。
課題山積みの大会周辺を現地レポート。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byYonhap/AFLO
posted2017/02/17 12:00
フィギュアスケート公開練習時の江陵アイスアリーナ。大きく、真新しく、最新設備が整った良いリンクのようである。
英語が通じないタクシー。手配する方法も無い……。
このメディア用シャトルバスも、運航を開始したのは競技開催の当日からだった。
早目に現地に入って公式練習から取材をしていた記者たちは、当然ながら会場までタクシーで往復をしていた。
だが、2日目にはプレスルームのヘルプデスクの前に、「タクシーを呼ぶのは私たちの仕事ではありません」と英語で書いた紙が貼られていた。
世界中どこの国に行っても、記者用のタクシーの手配をボランティアがやってくれるのは普通のことだ。まして英語を解さない江陵のタクシーを、韓国語のわからない海外メディア関係者はいったいどうやって呼べというのか。
欧州からやってきた記者たちも、ヘルプデスクの「ヘルプ」は、いったい何の意味なのかと、前代未聞の対応に呆れかえった。
会場もまだ完成していない五輪村の真ん中で、周辺には何もない――。
流しのタクシーを拾うために関係者たちは重い機材を担いで延々と大きな通りまで歩いたという。
やたら数の多いボランティアが……ただただ邪魔です。
会場に行って目についたのは、不要なボランティアの数の多さである。
国の玄関口である空港には1人もおらず、メディアホテルにもヘルプデスクは設置されていない。それなのに会場の中にだけ、邪魔なほどの数のボランティアたちがたむろして、リンクをバックに記念撮影などをしたり、選手を捕まえて写真をねだったりしている。
これとそっくりな状況を見たことがある。
これまで取材してきた5回の冬季五輪の中でもっとも不快な体験だったトリノ五輪だ。
荒川静香の金メダルで日本のファンにとっては思い出深い五輪だが、現地で取材する側にとっては運営の不手際が多い、つらい大会だった。
何を聞いても答えられない物見遊山気分のボランティアが大勢たむろし、会場の限られたスペースを占領して試合を見て楽しんでいた。
江陵アイスアリーナにも、何をしているのかわからないボランティアが歩くのに邪魔になるほどいるのである。
タクシーを呼ぶのは仕事ではないと主張する彼らが、いったい何をしていたのか……いまだに理解できないままだ。