詳説日本野球研究BACK NUMBER
センバツに漂う“打高投低”の予感。
清宮、安田以外の好選手を一挙紹介!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/02/14 08:00
屈託のない笑顔を浮かべる清宮。早実で一学年下の野村を含めて、今回の選抜では好打者が目白押しだ。
強打とバントを使い分けるのが甲子園の勝てる戦術。
また、両校の特徴としてバント戦術が挙げられる。これはかつての智辯和歌山の例でみるとわかりやすい。智辯和歌山は初出場した春の1985年、そして夏は'87年から'92年までに出場した計4回はいずれも甲子園で初戦敗退している。それが初勝利を挙げた'93年夏以降は驚異の勝率で突っ走り、高嶋仁監督は春、夏通算歴代ナンバーワンの63勝を挙げるほどになった。
この高嶋監督は勝ち出した原因を「バントを多用するようになってから」と話す。
勝てないときは後に控えるバッターが心許なかったため、バントより強打のサインを出したが、'93年以降は信頼できる打者が増え、走者を送ったほうが得点する確率が上がったので自然とバントが増えた、と言っている。
履正社と早実は強打が目立つ一方で、智辯和歌山同様にバントもしっかり決める。明治神宮大会決勝に話を戻すと、履正社は0対1でリードされた2回表、早実は4対4とした3回裏、さらに6対11でリードを許した5回裏に走者をバントで送っている。一方に偏らず、あるときは強く打っていき、あるときは確実に得点圏に進めて、あとの打者に託す、甲子園の伝統的な戦術で勝ち進んできた。
山田哲人のようなタイミングで打つ静岡・稲角塁。
その明治神宮大会で目立った打者は安田、清宮ら以外にもいる。初戦で早実に3対5で敗れた静岡で注目したのはクリーンアップの稲角塁(3年、一塁手)、成瀬和人(2年、左翼手)、小栁廉(3年、右翼手)の3人だ。
一本足打法の稲角はゆったりしたタイミングの取り方が山田哲人(ヤクルト)によく似ている。また成瀬は第2打席、小栁は第1打席で火の出るようなセンター前ヒットを放ち素質の高さを証明した。
宇部鴻城の4番、嶋谷将平(3年)は秋の公式戦打率.472も凄いが、遊撃手としての柔らかいフィールディングと強肩でも注目される存在。福岡大大濠の3番、古賀悠斗(3年、捕手)は明徳義塾戦で見せたイニング間1.88秒の強肩に魅了された。
現代野球はプロ、アマに限らず、打者は走塁とディフェンスを含めた総合力で評価するのが当たり前になっている。嶋谷と古賀はもちろん、安田と清宮も走攻守の三拍子が揃っているタイプだ。