月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
稀勢の里の横綱昇進でブレる初場所。
プチ鹿島、1月のスポーツ新聞時評。
posted2017/02/01 17:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Hideki Sugiyama
稀勢の里の初優勝に沸いた大相撲初場所。
一方で、横綱昇進決定の過程は「横綱審議委員会ってなんなの?」とも思わせた一件でもあった。
優勝決定の翌日、「日刊スポーツ」のコラムは《ある親方は「これは私が言ったとは書かないでね」と匿名を前提に声をひそめて話し始めた》という不穏な書き出しで始まった。
「稀勢の里の横綱昇進は、白鵬とやる前に決まったでしょう? 今場所の大関戦は1勝1敗で、休場した横綱2人と対戦していない。昇進が決まった段階で、格上に勝っていない。連続優勝でもない。『綱とり場所』とも言われていなかった。プレッシャーを乗り越えて横綱になった人とは違う。これは不平等だよ」(「記者席から」1月23日)
同じ日の「朝日新聞」は、「ファンの待ち望んだ稀勢の里の横綱昇進が事実上、決まった。だが、そのプロセスは甘いと感じる。」と書く。
横綱昇進の大前提である2場所連続優勝をしていない稀勢の里には、横綱審議委員会の内規の「優勝に準ずる成績」が適用された。それは角界の認識では決定戦に出た優勝同点か、優勝力士に1差。しかし先場所の稀勢の里は「優勝に次ぐ成績ではあったが2差だった」のである。
横審はムードで横綱を決めたのか?
《そもそも、今場所は「綱とり場所」の位置づけではなかった》《しかし、大関の快進撃とともに、昇進ムードが高まっていく》(朝日・同)
ムード?
え、横審はムードで横綱を決めたの?
ではスポーツ新聞を読み返してみよう。ムードの変化を確認できるかもしれない。
まず初日。
「横綱天覧相撲5戦全勝 白鵬」(日刊スポーツ・1月9日)
「遠藤痛恨の黒星発進」「土俵下 研ナオコもビックリ!」(サンスポ)
遠藤が土俵下に突き落とされ、砂かぶりで観戦していた研ナオコの写真が大きく載っていた。稀勢の里の綱取りを期待する記事はどこにもない。