月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
稀勢の里の横綱昇進でブレる初場所。
プチ鹿島、1月のスポーツ新聞時評。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/02/01 17:00
横綱昇進の祝いに大盃を抱えた稀勢の里。来月の春場所でも、横綱としての強さを発揮できるか。
「昇進の可能性もある」と書き始めた各紙。
2日目以降の主役は、「御嶽海初金星」(スポニチ1月10日)、「日馬連敗 横審『もう引退』守屋委員長バッサリ」(サンスポ1月11日)、「国技館沸かせたアクロバティック逆転 宇良バウアー!! 十両唯一4連勝」 (スポニチ1月12日)など。
5日目。稀勢の里がようやく大きく取り上げられる。
「稀勢 御嶽沈めた 悠々5連勝!!」(スポニチ1月13日)
ここで「ハイレベルな優勝なら、場所後に横綱昇進の可能性もある」(スポニチ)という文言が。
8日目。「稀勢全勝ターン 白鵬敗れ単独トップ」(サンスポ・1月16日)
サンスポも「明確な綱とり場所ではないが、ハイレベルな優勝ならば昇進の可能性もある」と書く。
9日目。「稀勢に土 全勝消えた」(サンスポ・1月17日)
稀勢の里が敗れたが、意外に各紙は騒いでいない。もしかして「いつものこと」だと思ってる?
「焦るな 落ち着け 硬くなるな」
10日目。「稀勢単独トップ」(日刊スポーツ・1月18日)
記事は控えめ。
11日目。この日終了時点で稀勢の里10勝1敗。2敗で白鵬らが追う展開。
日刊スポーツは前日までとはがらりと変わって1面で「今度こそV稀勢」「焦るな 落ち着け 硬くなるな」(1月19日)。
焦るな、落ち着け、硬くなるな。稀勢の里に言ってるようで自分に言い聞かせているようだ。
そう、スポーツ紙も「今度こそ、稀勢の里優勝……?」とドキドキし始めてきたのがわかる。今から考えると稀勢の里が敗れたときにあえて騒がなかったのは「期待しすぎないように」と自らを律していたのだろうか。
この日をきっかけに、紙面の空気が変わり始めた。