野球善哉BACK NUMBER
筒香嘉智が野球教育に本気で参戦。
「答えを与えすぎず、考える習慣を」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/01/29 08:00
イベントに参加した筒香。日本を代表するスラッガーと触れ合った野球少年は屈託のない表情を浮かべていた。
筒香が、現役では異例のスーパーバイザーに就任。
1月15日、大阪・河内長野市のグラウンドで行われた「アグレシーボ体験会」は、まさに野球界に一石を投じるイベントだった。
主催したのは硬式クラブチーム「堺ビッグボーイズ」の指導・運営をサポートするNPO法人BBフューチャー。参加したのプロ選手はDeNAの筒香嘉智、高城俊人、乙坂智である。
当日、会場には子どもたちとともに楽しむ3人の姿があった。
堺ビッグボーイズは、筒香が中学時代に在籍したチームだ。
この日は体験会と同時に、筒香自身が堺ビッグボーイズの小学部のスーパーバイザーに就任することも発表されている。現役選手がクラブチームのアドバイザー的な役職に付くのは極めて異例のことだが、このアクションには深い意義がある。
クラブが筒香の名を借りたように感じる人もいるかもしれないが、筒香にはしっかりとしたビジョンがあるのだ。
筒香「日本は子どもに答えを与えすぎ」
「自分自身、シーズンオフにアメリカやドミニカ共和国を訪問する中で、ジュニアの指導に関して感じることがある」
筒香が挙げたのは、日本の野球界が短期的な成果を上げる指導に陥っている点だ。日本では、指導者が子どもに1から10まで教えるきらいがある。筒香はそのことが与える影響を危惧し、こう力説する。
「海外の指導の様子を見て、日本とは対極的な指導法だなという印象がありました。日本が悪いとか、野球界が悪いというのはないんですけど、日本は子どもたちに対して答えを与えすぎているように思いました。そのことが子どもたちから創造力を奪い、指示待ちの行動をしている子が多くなっているのでは。大人になっても、自ら動けない選手がいます。
答えは自分で探す。指示を待たずに、自分で動く。ジュニアの頃から、子ども自身が考える時間を作らないとダメなんだと思うんです。大人が答えを与えたら、確かにその時は早く成長するように感じるかもしれません。でもそれは短期的なものであって、小さいころから自分で考えている人の方が、大人になった時に差をつけられるのかなと思います」