野球善哉BACK NUMBER
筒香嘉智が野球教育に本気で参戦。
「答えを与えすぎず、考える習慣を」
posted2017/01/29 08:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
「日本の野球が悪いというわけではない」
このオフの取材で少なくとも3回はその言葉を聞いた。
口にしたのは青木宣親(アストロズ)、中後悠平(ダイヤモンドバックス)、筒香嘉智(DeNA)である。
メジャーリーガーである青木、マイナー生活を経験している中後は日米の球団に所属したことで指導アプローチに違いを感じ、また、オフにアメリカやドミニカ共和国に渡った経験がある筒香も他国から学ぶことがあったようだ。
他国の指導方法に関心を示す一方、あまり言いすぎると日本の批判になりかねない。彼らはそう慮り、そんな言葉を口にしたのだろう。
ただ実際、指導に関して、日本の野球界は発想を転換する時期に来ているのではないかと思う。競技人口が減少の一途をたどる昨今の大きな要因に、指導の問題があると感じるからだ。
「将来どうなるか」より「こうすれば勝てる」に偏重。
体罰こそ減ったとはいえ、怒号・罵声を響かせる指導スタイルは、今でも日本の野球界から姿を消していない。選手のパフォーマンスの良さを褒めるよりも、まずはあら捜しから始める。それが野球の育成、ひいては日本の教育に少なからず存在する空気感であろう。
その遠因には、甲子園など目先の成果を要求される度合いが強いからだ。
短期で結果を残すためには、選手が将来にどうなっていくべきか云々より「こうすれば勝てる」と大人が子どもを操る手段が有効なケースがある。
そうした指導のアプローチが子どもたちを苦しめ、野球そのものの価値を下げているという事実に目を向けなければならない。野球を魅力あるスポーツとして、人生を懸ける価値があるものにしていく必要がある。