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大学枠撤廃から3日後の大激戦。
ラグビー日本選手権、帝京の意地。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byKyodo News

posted2017/01/23 17:00

大学枠撤廃から3日後の大激戦。ラグビー日本選手権、帝京の意地。<Number Web> photograph by Kyodo News

帝京大が見せた奮闘ぶりは、今季からサントリーを率いる沢木監督がハーフタイムで選手を鼓舞せざるを得ないほどだった。

大学の出場枠撤廃が決まった直後の一戦。

 この試合の3日前、1月18日に行われた日本ラグビー協会の理事会で、来季からの日本選手権の大学出場枠が撤廃されることが決まり、すぐに公式発表としてプレスリリースされていた。

 1963年度に始まったラグビー日本選手権は、日本ラグビーの歴史を彩ってきた重要なイベントだ。翌1964年度からは日本一をかけて、社会人王者と大学王者が一発勝負で激突するシステムが定着。1978年度から新日鐵釜石が、1988年度からは神戸製鋼が、ともに7連覇の金字塔を打ち立てるなど、歴史のほとんどは経験に優る社会人の優勢で進んだが、今季で54回目を迎える中で、8度は大学チームが王座を獲得していた。

 しかし、1994年度に神戸製鋼が大東大から3桁得点(102-14)を奪ったのを契機に「実力差がありすぎる」と見直し論があがり、1997年度からは社会人、大学とも複数チームが参加するトーナメント方式を導入。以後、大会形式は何度か変更されたものの、大学選手権の優勝チームが社会人に挑むという構図は、大会フォーマットの中に必ず残されていた。

大学枠撤廃は、スーパーラグビー参入が引き金に。

 大学チーム参加枠撤廃は、サンウルブズのスーパーラグビー参入が引き金だった。日本で開催される2019年ワールドカップ(W杯)に向け、日本代表を強化する策の一環として、昨年(2016年)に結成されたのがサンウルブズだ。2月下旬のスーパーラグビー開幕に向けた準備期間と選手の休養を考えれば、国内シーズンを早く終わらせる必要がある。日本協会の坂本典幸専務理事は、大学枠撤廃の理由をそう説明した。

 スーパーラグビーに万全の状態で臨みたい――その考えは理解できても、大学側から見れば、はしごを外された格好だ。大学戦線で無敵の戦いを続ける帝京大は、2013年度の日本選手権で「来年からは、ここで勝てるチーム作りを目指す」と岩出監督が宣言。春シーズンからトップリーグ勢との試合や練習試合を積極的に組み、翌年度は1回戦でトップリーグ10位のNECを31-25で破った。

 海外強豪国の代表選手を含む多くの外国人選手を擁し、グラウンドやクラブハウスなどの面でも恵まれた環境でラグビーに取り組むトップリーグのチームに、大学生チームが勝つのは快挙だった。

 だが、その挑戦の機会は失われる。

【次ページ】 「学生を日本選手権に残さなきゃ」という使命感。

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