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大学枠撤廃から3日後の大激戦。
ラグビー日本選手権、帝京の意地。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byKyodo News
posted2017/01/23 17:00
帝京大が見せた奮闘ぶりは、今季からサントリーを率いる沢木監督がハーフタイムで選手を鼓舞せざるを得ないほどだった。
今季のサントリーから最も得点を奪ったチームに。
そして、タイムアップのホーンが鳴ったあとのラストプレー。普段ならタッチに蹴り出す場面で、サントリーは攻めた。途中出場のオーストラリア代表FWジョージ・スミス、日本代表PR畠山健介が厳しいプレーで前進し、松島が再びゴールラインを駆け抜けた。
最終スコアは54-29だった。
しかし試合後、サントリー沢木敬介監督はややこわばった表情で言った。
「帝京大は勝ちたい気持ち、ハングリーさ、素晴らしい試合をしていた。我々はトップリーグの代表として恥ずかしい試合をしてしまった」
実際、サントリーは今季のトップリーグで、1試合で最も多くトライを取られたのが「3」、失点は「24」が最多だった。帝京大は、日本選手権の一発勝負でそれを破ってみせたのだ。
「相手を学生とは全然思っていなかった」
「相手を学生とは全然思っていなかった。トップリーグの強いチームとやるのと同じ気持ちで準備して戦いました」
2年前の帝京大主将だったサントリーの流大(ながれ・ゆたか)主将もそう後輩たちを称えた。
だが、帝京大の側に満足はなかった。岩出監督は言った。
「もっとクロスゲームをしたかった……勝つチャンスもあったと思うけど、最後はサントリーも攻めてきたね。学生相手にも手を抜かないという気持ちを感じました」
勝つための準備をしてきた自負もあった。V3までは、大学選手権に勝つことだけで精一杯だったが、大学を勝ち抜き、日本選手権の舞台でトップリーグ勢に挑む間に、ここでも戦えるのではないかと思えてきた。V4の年からは、大学選手権が終わってからではなく、シーズンの初めからトップリーグ勢に勝つことを目標に据えて1年を過ごした。その目標設定が学生の力を伸ばした。高い目標を持つことで、1年間の練習の質が変わったのだ。