炎の一筆入魂BACK NUMBER
深刻な「黒田ロス」を癒やす方法は?
広島連覇には新スター誕生が必要だ。
posted2017/01/03 08:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Keiji Ishikawa
広島にとって、今年は新たな歴史の1ページになると言える。
1999年の年末に起きた「2000年問題」に似ているのか、それとも国民的アイドルSMAPが解散する芸能界に似ているのか――。
2017年、広島は黒田博樹のいないシーズンを過ごすことになる。
2016年1月、前田健太投手がポスティングシステムで米大リーグ・ドジャースへ移籍した。当時も「マエケンロス」と心配された。だが、'17年の「黒田ロス」は'16年の「マエケンロス」よりも深い。
何より'16年の「マエケンロス」を最小限にとどめたのが、現役続行を決めた黒田だったと言える。
登板24試合、151回2/3、10勝8敗、防御率3.09。だが、黒田引退によって失うものは、'16年に残した数字だけではない。25年ぶりの優勝は、黒田抜きにはなかったと言えるからだ。
「あれだけ黒田さんがやっていると、弱音を吐けない」
黒田の存在感がチームを変えた。
登板に備えて妥協をしない姿勢は、若い投手陣の模範となった。投手陣を見守った會澤翼捕手は「あれだけ黒田さんがやっていると、若い投手は簡単に弱音を吐けない。ある意味でプレッシャーだと思う」。ほどよい緊張感、試合にかける執念が広島投手陣に充満していた。
また、黒田は1人ではなく、チームで戦っていた。
先発マウンドに上がる前には必ずチームメート、裏方とグータッチをする。全員で戦うという意思表示。この儀式は今ではクリス・ジョンソン、野村祐輔も行うようになった。
「完投できなくなった」ことで引退の二文字を考えた黒田だが、仲間のためならと、痛んだ体にムチを打ってきたのだ。