黒田の気概を伝えていこうという逞しき投手たち。

　前田が抜けた'16年に野村が成長したように、誰かが抜ければ誰かが出てくるのがプロ野球界の常なのだとしたら、そんな大きな喪失感の後に新たなスター誕生を期待してしまうのは自然だろう。

　少なくとも黒田の背中を見て、学んだ投手たちはその気概を持っている。

「完投できる投手、イニング数を投げられる投手になりたい。中継ぎ陣の負担を減らすことができるのはチームとしてはいいこと。チームを引っ張っていきたいというよりも、引っ張っていく。黒田さんにより近づいていけるように」（野村）

「もっともっと実力を付けて、黒田さんのように頼られる選手になりたい」（大瀬良）

「黒田さんに福井なら大丈夫だと、言ってもらえる選手になりたい。11勝はしたい。最低でも2桁は勝ちたい」（福井優也）

　「黒田さんくらいは勝ちたい。数字の部分だけでも埋められるようにしたい。2桁は勝ちたいと思っています。いつかは背中で引っ張っていけるような投手になりたい」（岡田）

「黒田ロス」を乗り越えるために、必要なこととは？

　選手は、黒田の背中を見てきただけではない。黒田に学び、巣立っていった。

　シーズン途中から投手陣のウオーミングアップが個々に委ねられたのは、黒田の提案がきっかけだった。

「アップはみんなそれぞれ準備の仕方が違うので、それぞれでいいんじゃないかと。メジャーはみんな個々でやっている。やらされる練習じゃダメだと思う」

　広島は失っただけではない。米球界から復帰した2年で黒田がチームに残したものもたくさんある。

「黒田ロス」解消と新たな歴史をつくるために必要なことは、黒田の遺産を次の世代につなぐことなのかもしれない。