炎の一筆入魂BACK NUMBER
深刻な「黒田ロス」を癒やす方法は?
広島連覇には新スター誕生が必要だ。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKeiji Ishikawa
posted2017/01/03 08:00
「黒田さんの穴は全員で埋める」(新井貴浩)の言葉がすべての選手の思いを代弁する。2017年シーズン、連覇をかけた新たな広島の戦いが始まる。
チームとチームメイトを、ずっと支え続けてきた黒田。
シーズン終盤のある試合で、交代を告げられた黒田は、すぐに投手コーチにこう聞いた。
「次は誰ですか?」
コーチの答えは当時フル回転していた「今村」だった。
まだ2イニング投げなければいけないタイミングだったので、続投を志願した。好調なチームを陰ながら支えていた後輩の負担を、少しでも減らしてやりたかったのだ。
チームが苦しいとき、チームメートが苦しいときを敏感に感じ取り、自然と行動できるのが、黒田だった。
CSでは黒田が音頭を取ってモチベーション映像を製作し、初戦の試合開始直前に巨大スクリーンで流した。実戦から離れていた広島ナインの士気が一気に高まり、日本シリーズ出場へとつながった。
黒田の存在は「誰か1人で背負えるものじゃない」。
シーズンの流れを変えていたかもしれない潮目には、いつも黒田がいた。
'17年シーズンで同じような分岐点に立ったとき、正しい方向へ導いてくれる存在はいるのか――。
ともにチームを引っ張った新井貴浩が「誰か1人で背負えるものじゃない」と言うように、事の重大さは誰よりも選手がぽっかり空いた穴の大きさを痛感している。
何度もアドバイスを求めてきた大瀬良大地は「到底僕1人で埋められないので、チーム一丸となって穴を埋め、その1人になれるよう死に物狂いでやっていきたい」と語り、新人1年目に多くを学んだ岡田明丈も「黒田さんはチーム内の雰囲気を変えられる方なので、チームの中で大きな穴だと思うし、自分が埋められるようなものではない」と感じている。