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宇佐美貴史の出場機会が急増中。
「弱者のサッカー」も出来るのだ!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/12/15 11:30
宇佐美貴史がある種の「天才」であることは間違いない。その能力を爆発させる準備は、着々と進行中だ。
宇佐美「日本代表でも引いて守ることありますよね」
第14節のHSV戦では相手に退場者が出たためボール支配率で大きく上回ることになったが、13試合を終えた時点でのアウクスブルクの平均ボール支配率は45.5%。リーグで下から数えて5番目だ。
昨シーズン、シュスター監督が率いていたダルムシュタットのボール支配率はリーグで唯一40%を下回っていた。それと比べればいくぶん数字は上がっているものの、シュスター監督がいわゆる『弱者のサッカー』を信奉している点に変わりはない。
しかし、『弱者のサッカー』と評されるスタイルは、チームが弱いということを単純に意味するわけではない。
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宇佐美は、シュスター監督の求めるサッカーの中で成功することが、選手個人としての成長だけではなく、現代サッカーの流れを考えても、日本代表で活躍するためにも、意味があると考えている。
「例えば日本代表でも、オーストラリアとアウェーでやるときには守備を固め、その中で前に出て行くような戦いをしましたよね。日本代表でもそういうことが行われ始めている、と。『そうなった状況でコイツは使えないよね』という選手だったら、僕としても納得は出来ない。
今日の試合でも何回か球際で勝って、そこから仕掛けていけた場面がありましたけど、そういうシーンをもっと増やしていきたくて。それを練習からも、ずっと意識してやっているところです」
劇的に増えてきたスプリント回数。
そして、こう力を込めた。
「自分が変化していかなきゃいけないということは、日本でやっていたときからも感じていました。むしろ僕にとって、今のチームスタイルは好都合だと思うんですよね」
宇佐美の言葉が強がりでないのは、実際のデータからも明らかだ。
途中出場したケルン戦では、12分間の出場で8回のスプリント数を記録している。90分に換算すると、60回もスプリントした計算になる。
フル出場と途中出場を一概に比較することはもちろん出来ないが、ヘルタ・ベルリンの多くの試合でスプリント数がチームトップを記録する原口元気でさえ、1試合のスプリント数は少ないと25回、多くても35回程度だ。宇佐美が攻守で走り回っているのは、疑いようのない事実だ。