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宇佐美貴史の出場機会が急増中。
「弱者のサッカー」も出来るのだ!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/12/15 11:30
宇佐美貴史がある種の「天才」であることは間違いない。その能力を爆発させる準備は、着々と進行中だ。
取り組んでいるのは、自分と真逆のスタイル。
おそらく、宇佐美にはピッチの上での2つ先、3つ先のプレーまで見えているだろうし、監督のチームマネージメントの行方を予想する能力があるはずだ。
しかしピッチの上で、選手が何もないところで足を滑らせてしまうことがあるように、監督やGMなどを含めたチーム編成が、誰も予想できない結末を迎えることもあるだろうし、それゆえに理不尽な状況が訪れることもよくある。
計算できるからこそ、先が読めるからこそ、自分のスタイルとは違うものにガムシャラに取り組む宇佐美の今の姿勢は、大きな可能性を感じさせる。
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アウクスブルクのバインツィアル監督が退任した時点で、ブンデスリーガの他の17クラブを見渡して、もっとも宇佐美のスタイルとは合わないサッカーをするのが、シュスター監督だったことは間違いない。しかしそんな状況を受け入れて、海を渡ったのだ。そこで腐るような男ではないだろう。
攻撃能力がブンデスで通用することは疑いない。
宇佐美がホッフェンハイム時代に決めた、相手チームの3選手を計4回かわしてのゴールは、ドイツでも大きな話題になった。
フライブルク戦でボールを受けてから反転し、ペナルティエリアの外から蹴り込んだミドルシュートは、日本人はペナルティエリアの外からのシュートが少ないと嘆く日本代表のハリルホジッチ監督が両手を上げて喜びそうなスーパーゴールだった。彼の攻撃能力がブンデスリーガのディフェンダーを圧倒するものであることは、すでに証明している。
あのとき足りなかったものを身につけたとき、宇佐美がリーグを席巻するような活躍を見せる可能性はおおいにある。
12月14日のドイツ時間の午後、アウクスブルクはシュスター監督とコーチ陣の解任を発表した。ロイターGMは「最近のチームが見せているサッカーが我々の望んでいるようなものとは違ってきていた」と理由を説明した。後任は下部組織の責任者だったバウム氏が務めることになる。
この先アウクスブルクがどのようなサッカーを志向していくかは不透明だ。しかし、シュスター監督の下で宇佐美が腐らず、前向きに取り組んだという事実はプラスに働くことはあっても、決してマイナスにはならい。
年内の残りの2試合とそこに向けた準備期間は、宇佐美にとって来年のさらなる飛躍につながる大事な時間となる。